01__孤独な魔王様
捨て子・口減し的な描写を含みます。 不得手な方は、此処で引き返してください。 苦手に感じたら、すぐに引き返す事を推奨致します。
また『話なげーよ、メンドクセェ』と感じた方も、不快をもよおす前に戻る事を お薦めします。
常用漢字ではない漢字の使用が多々あります。 僅かですが、当て字もあります。それ等は、誤字・脱字と共に、広い心で お赦しください。
___視点:東の魔王 - ロキ___
俺の称は ロキ。
魔物の中でも 勍い仂と 高い知性を持つ魔族であり、その頂点に立つ1人でもある。
早い譚が、幾つもある魔物の国の1っに生まれて、今は 此処で王様をやってる。
好きで魔王になった って云うよりも、単に『俺よりも勍い者が 此処にいなかったから成っちゃった』って感じだ。
俺の両親が 先代の魔王だった って云うのも、要因の1っだと思うけど。
兎に角、俺は 魔王になった。
産まれてから 20年目の事だ。
魔族は、具える魔力に比例して 長寿になってく。
お陰で、長寿である程に 成長速度が遅い。
そんな訳で、49歳なんて 人間にしたら いい中年だろうけど、魔族にすれば 幼児の様なモノなんだ。
実際、俺の見た目は 3〜4歳の幼児でしかない。
人間にしか見えないから、格躰のいい魔族達に囲まれたら 余計に弱々しく映る筈だ。
まぁ、囲まれた事 殆どないんだけどね。
一国の王が 臣下に囲まれないのは、俺のせいでもある。
俺は、魔力が強い。
滅茶苦茶 強い、アホの様に 強い、要らん程 強い。
どのくらいか って云うと、幹部クラスの魔族達でさえ 俺の傍に来れないくらい強い。
俺には その感覚は理解出来ないけど、余りに魔力の余波が強すぎて 内臓を切り刻まれる感じなんだそうだ。
そんな慄しい魔力が、24時間-絶え間なく 俺から垂れ流されてる。
だから、抵抗する術のない連中に 迂闊に近付くと、相手は あっさり死にかける。
魔力が強いのは 俺のせいじゃないが、ちゃんと制えてやれないのは、間違いなく 俺のせいだ。
俺がガキなせいで、自力で 魔力を極小に制える事が出来ないせいだ。
両親が生きてた頃は 2人の仂で制えてもらってたけど、死んだ途端 その倆は効力を弱めた。
あっと云う間に、傍付きのメイド達は のた打ち回って悶え苦しみ、幹部-以下の兵達は 発狂しそうになってた。
正直、あの時の光景は トラウマになってる。
だって、傷付けたくないのに 俺のせいで死にかけてるんだぜ?
幼心に、ショックだった。
或る意味、両親の死より ショックだったかも。
そんな訳で、俺は 引き篭もる事にした。
それも、城の中でも 近付く者のない、北の塔に。
祥いな事に、俺の中には 妙な記憶があって、日常生活を自分で熟す分には困ってない。
耐性のある幹部の1人が、決まった時間に 食糧を持って来る。
正確には 食材を持って来る。
調理をするのは 俺だ。
料理に始まり、家事-全般は 何故か遣り方が判る。
それまで、見た事も やった事もなかった俺が、案外 卒なく家事を熟す事が出来たのも、謎の記憶がある お陰だ。
この事は両親しか知らなかったから 城の者達は驚いてたけど、俺にとっては『侑かった』の一言に尽きる。
北の塔に引き篭もる決意が付いたのも、この記憶の お陰だ。
延いては、記憶の中の『自立心の強い男』の お陰だ。
誰だか知らないけど、会えたら 是非 お礼が言いたい。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
___視点:東の魔王 - ロキ___
この北の塔に篭もる様になって、どのくらい経ったんだろう。
生活が単調なせいだろうけど、日時感覚が曖昧になってくる。
それにしても、今日は 天気がいい。
いつも 晴天だけど、今日は、特別 気持ちがいい。
何だか 気持ちが浮いてる。
何て云うか、こう、いい事でも起こりそうな予感がする。
実際は 有り得ないんだろうけど、小さな奇蹟でも起こってくれそうな、そんな感じがしてる気がする。
そうじゃなければ、ピクニックの前の日、みたいな?
ーーーーーー ぴ く に っ く 。
そんなの、いつが最後だったかなぁ。
父さんも母さんも生きてた頃だよなぁ。
周りに沢山 魔人達がいて、わいわいと賑やかで 愉しかった。
この塔に篭もってからは、人と談すのも 数分になっちゃったけど。
《 ……ぅあ〜、哀しくなってきたぁ。》
俺のテンションが下向きになってきた攸で、この塔に近付いてくる気配を捉えた。
壁の時計を見ると、いつもの時間だ。
「甲斐甲斐しいなぁ」
1日2回、俺の許には食糧が届く。
こんなガキでも 王として認めてるらしく、新鮮な食材を搬んで来る。
《 交代で来ればいいのに。》
食糧を届けに来てくれるのは 有り難いけど、大丈夫なんだろうか。
あいつは強いけど、俺の傍に来るのは それなりに辣い筈だ。
平気を妝ってるけど、大丈夫な筈がないんだ。
そう思った途端、あの時の光景が フラッシュバックした。
俺を大切にしてくれる者達が 次々と倒れて、血を吐きながら悶えてる。
あんなのは、もう 勘弁してほしい。
《 ……ぁあ〜、泣きたくなってきたぁ。》
いい事が起こりそう って思ったのに、凄く いい気分だった筈なのに。
何も起こらない内から、気分 最悪だ。
俺のテンションが駄々下がりになった攸で、ドアがノックされた。
「ロキ様、リクです」
「お〜」
気合の入らない声で返事をすると、ドアが敞いて 魔族が1人 入って来た。
入って来て すぐ扉を閉めると、軽く 頭を下げる。
「ロキ様、食材を お持ち致しました」
そして、手に持っていた木箱を 扉の脇の棚に置く。
それから 俺に向き直って、改めて 律儀なまでに丁寧な お辞儀をした。
リクは、幹部の1人だ。
人間なら『大臣』って攸かな。
身長-185センチ、細身で 端正な顔立ちをしている。
見た感じ 20代半ばくらいの好青年、って云うか『いけめん』とか云われる部類。
どうやら、魔力の質が高い程 容姿は姚しくなる傾向にあるらしい。
この城の連中は、メイドに至るまで 美男美女だしな。
俺の両親なんか、それは それは……。
「 ーーーーーー……… 」
何か、テンションが下がってばかりだな。
今日、本当に、何かいい事 起こりそうな気がしてたのに。
「ロキ様?」
部屋の入口に立ったままのリクが、心配そうな顔を向けてきた。
そりゃ そうだ。
勝手に一喜一憂してる、って云うか『憂』しかしてないけど、何だか落ち込んでるガキを見れば 気になるよな。
「何でもない、少し…… 」
昔の事を思い出してた、って禁句に近い科白は 言わないで済んだ。
途中で気付いて 引っ込めた訳じゃない。
遠くに 変わった気配を見付けたんだ。
《 何だ……? 》
俺の意識は、一気に その気配に引き寄せられた。
微かな気配が この国に入って来た。
何人もいる攸をみると、狩りに来た冒険者か、俺を仆しに来た 勇者の類いか。
どっちにしても 興味はないけど……けど。
何だろう、この感じ。
今までに感じた事ない、この気持ちは何だ?
《 覘覧……してみるか。》
俺は 睛を瞑った。
勝手に溢れてる魔力の一部を 細く伸ばす感覚で、気配の位置へ邀う。
高速で 樹木の上空を抜け、森の入口の辺りを俯瞰する。
魔力で視てるから、生い孳る葉も 邪魔にならない。
それ等を透過して、動く気配を視る事が可能だ。
《 引き篭もってから、こんな事ばかり巧くなるなぁ。》
何だか情けない気分になってきたけど、次の瞬間 全部 吹っ飛んだ。
「え? ……え? ーーーーーーえぇえええっ⁈」
急に叫んだ俺に驚いたのか、離れた処にいるリクが 息を飲んだ音がした。
珍しい反応なのに、そんな事に気付けないくらい 今の俺は混乱してる。
驚いたなんてモンじゃない。
《 偶然? なに、それ? 有り得ないだろう⁉︎ 》
惟わず、瞼が敞く。
かっと睛を見敞いたせいで、覘覧の倆は解けた。
この国の入口の光景から、殺風景な室内と 喫驚してる臣下に、視界が切り替わっても 俺は混乱してた。
睛にしたモノが 信じられない、有り得るんだろうか。
伝説と云われるくらい稀な存在が、あっちのほうから 自分の陣地にやって来るなんて幸運が。
《 お、落ち着け、俺。今は、考えるのが先だ。驚くのは 後からでも出来る。》
無理矢理 深呼吸をして、眼にした情報を整理する。
こんな場所に あれを連れて来るんだ、狩りじゃない。
況してや、俺を仆すなんて目的じゃないのは 判り切ってる。
《 じゃ、何が……? 》
其処まで考えて、厭な予感がした。
いや、本当は、最初から察してたんだ。
でも、頭の何処かで 否定してた。
否定してほしかった……でも。
あの先には、岩を切り出して造られた台の様なモノがあって、人間達に『生贄の祭壇』って聘ばれてるとか。
本に書いてあった この国の歴史を思い出して、まだ 頭の小さなエリアで『まさか』と惟う。
だけど、その確率が高い。
《 だったら、俺が貰ってもいい訳だ。》
惟うが早いか、俺は 埋もれる様に座ってたソファから飛び降りた。
軀の大きさが幼児だから、こうなると 手前のソファの陰に 簡単に隠れる。
当然、脚も短いから 窓までが遠い。
リクくらい大きかったら 10歩で充分なのに、この脚じゃ その何倍も掛かる。
それでも、走れば(走ってるんだ!)すぐ(あぁ、すぐさ!)着くんだけどな!
扉から離れた窓に駆け寄った俺を、リクが 睛を丸くして見てる。
「ロキ様?」
それまで、驚きつつも 邪魔をしなかったリクが、怪訝そうな声を出した。
こう云うリクも珍しいんだと 頭の何処かで気付いたけど、今は それ攸じゃない。
「ちょっと出掛けて来る」
「はいィ⁈」
間髪入れずに、場所と目的を訊かれた。
流石は 父さんに仕えた歴戦の魔族、驚いてても 頭の回転が早いな。
俺の魔力の影響が出るから 詰め寄られはしなかったけど……怖かった。
そりゃ、即-白状したさ。
「生贄の祭壇に〔愛し子〕だ」
「 ーーーーーーはいィ⁈」
声が裏返る程 驚いてる臣下に、内心で 肯いてた。
判る、判るよ、確認した俺だって 信じられないんだ。
「迎えに行ってくる」
この後、超早口になったリクの 怒涛の説得に遭って、迎えの役は リクに譲る事になった。
詳細は……まぁ、端折らせてもらおうかな。
ダッテ、オモイダシタク ナイモンネ。
ロキは、両親の死後 北の塔に引き篭もって、出る事はありませんでした。
近付く者がいなくても、塔の裏にある小さな庭にさえ 出る事はありませんでした。
そんな彼の『初めての お出掛け』になる筈でしたが、見事に リクに止められましたね。
最初は 出掛けちゃうストーリーにしてたんですが、それじゃ 余りにも『側近、役に立たなさすぎじゃね?』と思って 変えました。
良かったのか、悪かったのか…。
塔に取り残されて 追う事も出来ずに苦悩した後『やはり すぐに追えば良かったのでは』と葛藤するリクが書きたかったんだけど…。
余りにも 意地悪すぎたので、自重します。
機会があったら 書こう。
結局、ちょっと意地悪するのが好き、なのです。




