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知恵の林檎、その裏側で

作者: 氷純

 我々悪魔は基本的に怠惰だ。

 必要に迫られなければ家から出ることもない。

 非常に仲がよい悪魔が内輪で飲み会を開いたが誰一人会場に現れなかったという笑い話まである。

 それほどまでに我々は怠惰なのだ。

 だが、人々を堕落させなければならない。

 それは神の子である人間が堕落していないと手が空いた天使共が我々を滅ぼしに来るからだ。

 生存戦略という奴である。

 幸いにして人間は堕落一瞬、改心一生とされる程にぐーたらした生き物である。

 我々悪魔が人間に恐れられているのも恐怖を植え付けることで言うことを聞かせ易くするためだ。

 大概において、人間は我々悪魔より頭が悪い。だが、例外がある。

 それは『恋する女』だ。

 これは危ない。我々悪魔よりよっぽど質が悪い。

 こんな逸話がある。

 知識の蛇と後世語り継がれる悪魔と人間史上初の女であるイブについての話だ。

 一糸纏わぬ姿のイブを知識の蛇がからかうと、彼女は頬を染めたという。

 彼女はその後、知識の蛇に導かれて知恵の林檎にたどり着く。

「一つ食べてみると良い」

「一つでは足りないわ」

 イブはそう答えて二つ手に取った。

 きびすを返したイブに知識の蛇が慌てて言う。

「この場で食べないのか?」

「あら、いけない。気が急いてしまったわ」

 イブは軽く返して林檎をかじりつつアダムの元に帰って行ったそうだ。

 暫くして戻ってきたイブが知識の蛇に感謝を述べた。

「ありがとう。これでアダムと二人きりになれるわ」

 なんとも恐ろしい話である。

 アダムは勿論、知識の蛇や神さえも手玉に取ったのだ、イブは。

 恋する女は強かである。

 知恵の林檎を食べる前には獲得していないはずの羞恥心を我慢できるほどに……。


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