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2-2:湖の貴婦人

 翌朝、クロトールはティマイオスが編成した部隊とともにフェン・エノックを発った。当日は晴れて視界も良く、移動は文句なしに順調だったが、現地に着いてからは思うようにいかなくなった。部隊の兵士は殺戮の現場に慣れておらず、体調不良になる者が大勢出たのだ。


 それでも、音を上げる者は一人もいなかった。兵士たちが力を合わせ、時に励まし合う様は心揺さぶるものがあり、クロトールの記憶に深く刻まれた。同時に、これまで抱いていた後ろめたい感情が消えていくような気がした。


 犠牲者は村のはずれに埋葬され、墓が建てられた。クロトールは村で見栄えのいい花を二輪購入すると、ファリオンとロナス、それぞれの墓標に手向けた。彼らの冥福を祈った時、ようやく安堵が訪れた。これらは為されるべきことだった。たとえ仲間として過ごした時間が、どれだけ短かったとしても。


「気分はどうだ、クロトール?」


 こちらに歩いてきたティマイオスの顔は、少しやつれて見えた。彼は部隊の結成から指揮までを一人でこなしていたから、疲れが相当溜まっているに違いない。クロトールはこれほど熱心に働く役人を今まで見たことがなかった。


「上々とは言えないが、多少は前向きになれた気がするよ」


 クロトールはぎこちない笑みを浮かべて答えた。


「ありがとう、ティマイオス。仲間を弔うことができたのは、あなたのおかげだ。教えてくれ、この恩にどう報いればいい?」


 すると、ティマイオスは大げさに首を振って、次のように答えた。


「気にするな。あれはやらなきゃいけないことだった。死者には安らかに眠る権利がある。ファリオンとロナス、それから補給隊の連中もだ」


「一緒に過ごした時間は長くないが、ファリオンとロナスは私の大切な仲間だ」


 クロトールはうつむきがちに、しかしはっきりと述べた。


「ティマイオス、この村の兵士たちを集めて、あの狼を討伐できないか? 二人はあのダイアウルフに殺されたんだ」


 しかし、クロトールの思いとは裏腹に、ティマイオスは芳しくない表情を浮かべていた。


「残念ながら、それについては力になれそうにない。これを認めるのは(しゃく)だが、この村の兵士は数と名ばかりで、質が伴っていないんだ。あんたも実際にその目で見ただろう?」


「確かに、ここの兵士は場慣れしていないようだったな」


 クロトールは村の入り口で会った若造たちや、遺体に涙を浮かべる兵士の姿を思い返した。あの体たらくでは、彼らは狼と目を合わせた瞬間に気を失うだろう。


「彼らはこの辺りから集めた民兵なのか? だとすると、人材不足は相当深刻なようだな」


「そうだ。腕の立つ連中は、常に森の最前線に送られるんだ」


 ティマイオスは答え、ちらりと森の奥の方を見た。おそらく彼の言う“最前線”の方角だろう。


「フェン・エノックは<黒鉛の森林>のほんの入り口に過ぎない。森の中央部はここより賑やかで、常にドンパチが行われている。聞いた話によると、そこには妙な連中が居座って、何か悪さをしているらしいな」


「妙な連中? <永遠の夜明け>のことか?」


 クロトールは森で出会った三人組を思い出して尋ねたが、ティマイオスは困った風に首を振るだけだった。


「そこまでは分からない。仕事であっちに行く機会があったら、誰かを捕まえて聞いてみることだな——そうだ、仕事で思い出したが、この後はどうするつもりなんだ、審問官? 今後の予定は?」


 クロトールはしばらくの間押し黙った。無遠慮な質問に気分を害したからではない。単純に答えることができなかったのだ。


「今後どうするか」


 クロトールは力なくつぶやいた。


「正直言うと、分からない。いったい、どうしたらいいんだろうな」



***



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