3-1:<永遠の夜明け>
クロトールは馬のファリオンとともに旅を再開した。かつての同行者で、今は亡き傭兵オレクは、依頼料の百ソレルとともに道の脇で眠っている。故郷に立派な家を建てるという彼の夢は、今後その肉体とともにゆっくり朽ちていくのだろう。そう思うと少し憐れな気もするが、これ以上できることはない。先へ進まなくては。
ファリオンに乗って移動している最中、腰に提げた剣がふと気になった。物乞いの女——湖の貴婦人がくれた<誇り>という名の剣だ。あの女は立ち去る前、”丘の上で湖を探せ”と言い残した。そう言われたからには真相を知らねば気がすまない。クー・ファディルへ向かう前に、まずはその丘を見つけるべきだろう。
草に覆われた急勾配の丘が現れたのは、移動を始めて半時が経った頃だった。クロトールは馬のファリオンを地上に留まらせると、足を滑らせないよう気をつけながら上まで登った。頂上に着くと、青空と白き山々に抱かれた森の全体を見渡すことができた。森の色は緑というより黒に近く、それこそが<黒鉛の森林>と呼ばれる所以だった。
「あれだな」
湖はその風景の中にあった。南北を走る河川のそばにある、ひときわ大きな水源がそれだ。しかし、ここから見る分にはごく普通の湖で、おかしな点は何もない。女の言う”答え”を知るには、もっと近くまで行く必要があるのだろうか。
クロトールは地図を広げて目の前の景色と見比べた。次の目的地であるクー・ファディルと湖は同じ方角にあり、湖の方が若干近い。だから村は後回しにして、先に湖へ向かおう。丘を下りたクロトールはファリオンの背に飛び乗った。
「出発しよう、ファリオン。日暮れ前には村に着きたいから、駆け足になるぞ」
拍車をかけると、ファリオンは自由を求める風のように走った。村に近づくにつれて道幅は広くなり、馬を駆る余裕も増していった。これほど道が整っているのは、その分人の往来があるからだろう。とすれば、道中誰かに出くわすこともあるかもしれない。村人か兵士か、はたまた旅人の財布を狙う強盗か。
もしくは<永遠の夜明け>——黒髪の女と羽根つき帽の狩人、とび色髪の女の三人組と、再び会うこともあるだろうか。あの当時、ダイアウルフから助けてくれたことには感謝しているが、結局のところ、連中は何者なのだろう。
少なくとも人畜無害な地元住民、というわけではなさそうだ。彼らは明らかに異端の魔術を使用していた。とすれば、自分は彼らと本来敵同士、ということになる。審問官は異端者を捕えるのが仕事だからだ。
あの三人は未だにダイアウルフを追っているのだろうか。同僚のファリオンとロナスを殺した、あの忌まわしい狼を。そんな風に考えながら走っていると、やがて道の上を歩く複数人の村人に出くわした。
村人の近くに寄ったクロトールは、その姿を見て一瞬戸惑った。彼らは人間ではあったが、明らかに帝国人ではなかった。低い背丈にがっしりした体躯、太く頑丈な手足。かつて帝国に土地を追われた人々の末裔——<森の民>だ。
「すまない。この近くにある湖を探しているのだが、どの方向にあるか知らないか?」
クロトールは馬を降りて彼らに尋ねた。可能な限り友好的に接したが、向こうは警戒しているのか、表情を石のように硬くしている。気まずい沈黙の後でようやく口を開いたのは、腰にかごを提げた漁師らしき男だった。
「行くつもりなら止めた方がいい。今じゃあそこは地獄だ。あるのは死体だけで、魚も何も獲れないぞ」
「死体だと?」




