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HANABI

作者: masuta

今年も又、あの季節がやってきた。開始時刻の1時間前である。

既に駅は人、人、人、改札を出るのにも一苦労。

蒸し暑い中、浴衣、浴衣が立ちふさがり

中々先に進めない。やや日も落ちてきて、少し風も感じるが

駅でのデジタル計には、31℃と表示があり、表示を見るだけで、

さらに暑さを感じてしまう。


それでも、人と人の間を掻い潜り、進まなくては。

途中の信号待ちでは、警備の方々の誘導が続く


2車線を渡り切るには、信号は後、何回待てば良いのであろうか。

蒸し暑さと、なかなか前に進むことが出来ない状態は、苛立ちを覚える。


時間だけが過ぎていく。


会場への通り道には、いわゆる屋台、出店は無く、整備されている。

ゴミの散乱を防ぐのと、その場で立ち尽くす人を防ぐためである。


喉が渇いてきたが、信号が青になっても、少し、わずか、前にすすむだけで

道を渡ることは出来ない。あと、3回は信号が変わらないと、渡れない

途中背中に、ドスンと痛みを感じたが、誰?何?押されたのか、何かが当たったのかも

確認は出来ない。

苛立ちは募るが、この道を渡るしか、会場へ入る事は出来ない。

信号は青にかわるが、少し、また、少しだけ前にすすみ、信号は赤になった。

次はなんとか、渡れそうだ。


交通整理をしている、ホイッスルが鳴り響く。

次の信号で渡り切っても、さらに歩かなくては、会場には入れない。


信号が青に変わり、蒸し暑さの中、やっと、横断歩道を渡り切った。

しかし、この先も浴衣、浴衣、浴衣の人で詰まっている。

すいません、と声をかけながら、中を割って先にすすむ

段々と入口らしきものが、見えてきて

アナウンスには、チケットを用意してから、進んでください

と流れていた。チケットが必要な事を知らない、カップルたちは、ここまで来て、

それはないだろうと、係りの人に文句を言っているが、元々の決まりである。

そして、入り口に入り、チケットを見せた。

中にはいるものの、それでも、浴衣、浴衣、浴衣で前に進むことが、困難であった。

一度、屋台で、飲み物を買って、その場で飲み干した。

再度、前に進み、浴衣渋滞をかいくぐり、一番前の方に、

そう、この場所である。

やっと、着いた。駅についてから、ここに来るまで1時間以上かかっていた。

丁度その時、

海辺の方で、まっすぐに空を駆け登る1発の花火が

「ひゅーーーーん、ばーーーーん」


ぎりぎり、開始には間に合ったのだ。


空を見上げ、花火は奇麗に夜空を輝かせ、そして、消えていく


打ち上げ場所は、3か所。ここからは2か所が確認できる。最高のポジションである。


流れるように、打ちあがり、そして、次々と、大きな、大きな、花火が夜空を照らしていく。


浴衣、浴衣、浴衣にも、花火の明かりが反射して、夏を感じる事は十分すぎる。


昨年と同じ場所を確保出来た事もあり、次の打ち上げは、見えない場所からあがることも、知っている。

見えない場所から打ちあがっても、夜空を照らす花火は、しっかりと奇麗に見え、又、海辺にも花火が映る。


この光景を、見るために、長い人の道を、掻い潜り、ここまで来たのだから、

ずっと、空を見上げていた。音はものすごく大きいので、周りの会話は一切聞こえない。

でも、この場所が良いのである。

色とりどりの花火が打ちあがっては、消えていく。


徐々に花火の打ちあがるペースが、早くなっていくような、気がしていた。

それは、それで、夜空を魅了するのであり、上を向きながら、空と海辺に映る花火がとても、とても奇麗であった。


花火が打ちあがっている間は、暑さを忘れ、ずっと、空に打ちあがる花火を、見ていた。


さらに、打ちあがるペースは、間隔を短くしていき、沢山の花火が打ちあがる。

その音は、波に跳ね返ってくるようで、胸に音が刺さる。

そして、一気に3か所から花火が連発であがっていき、いよいよ、クライマックスである。

奇麗だ。花火の大きな音も、奇麗に胸に響いていた。


あたりは、静かになった。

そう、丁度1時間。

最後の打ち上げが終わった事を告げるアナウンスがあり、

花火大会は、終わった。

徐々に浴衣、浴衣、浴衣の人達が、会場をあとにしていく。


奇麗に打ちあがった、花火、そう、花火大会は終わったのである。


次々に人が会場を後にする。


花火大会。


花火大会。


花火大会。


その場に立ち尽くす。


ずっと、その場に立ち尽くす。


一年前を思い出し



ずっと、ずっと、ずっと

その場に立ちすくす。


そう、もう、隣には、あなたは居ない


来年も一緒に来ようねと、笑って、言ってくれたのに


もう、この世の、

ど、こ、に、も




HANABI

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