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理想的世界 2

めっちゃ長くなりました。

前話に追加するか迷いましたが、面倒なのでこのままいきます。

「そうです、お二人とも冒険なさるのであれば、先ずはスキルと魔力の確認をしておきましょうか」


「「スキル?」」


 魔法は知っていたがスキルは知らなかった僕とジグが同時に首を傾げる。


「スキルは魔力を持たない人でも使える能力です。簡単に言うと各自の才能に名前がついたようなものですね。この世界では安全のために、魔力持ちの種族の血族は3歳、7歳、12歳の定期検診で、魔力無しの種族は7歳と12歳の定期検診で魔力測定とスキル確認を受けるんです。太古の昔からの種族混血等から、魔力やスキルの暴走が著しく増えたので、安全のために発言する最少年齢から定期検診をしてコントロールを訓練したり危険を無くしてるんです。因みに神に使える者で、ちゃんと資格のある人だけがこの定期検診をすることができるんですけど、なんと!」


 えへんっとシャーナが豊満な胸を張る。


「こう見えまして私、資格を持っているのですよ!」


 すごいだろう!というように言うシャーナに、僕とジグは「「おー…」」とパチパチ拍手する。よく分からんが話しの内容から、凄いことなのだろう。

 シャーナはくるりくるりと指を数回回すと、テーブルの真ん中にまた光の粒子が舞うと、豪華な金の台座に乗った大きな水晶玉が鎮座していた。


「では、こちらに利き手を乗せて下さい」


「んじゃジグからで」


「え?…まぁ、いいけど」


 そろりとジグが右手を水晶に乗せると、シャーナがまた指をくるくると回すと、光の粒子が水晶に吸い込まれた。


「はい、出ました!ジグさんの魔力量は結構高いですね!適性は風と炎、そして補助魔法にも適性がありますね!スキルは身体強化があるので補助魔法との相性もバッチリですし、剣術と体術のスキルもお持ちなので、運動や戦闘においては頼もしい限りですね!」


 ジグは戦闘系特化型か。


「っしゃ!魔法が使える!」


 魔法、めっちゃ気になってたみたいだもんな。

 次は僕の番、とシャーナに促されて手を水晶に置く。


「ユウさんの適性は水と土、そして私と同じ無属性ですね!スキルは探索、調合、鑑定ですね!お二人とも凄いですね!鍛えれば幅広い能力が開花するスキルばかりですよ!魔法の適性も三種類ですし、鍛えれば合成魔法も使えるようになりますよ!」


 シャーナが興奮したように目を輝かせる。

 ふむ、つまりスキルは派生するということかな。

 前の世界であったファンタジー知識的に行くと、ジグの剣術からは剣士や騎士や勇者ってところで、僕の調合だと料理人や薬師、錬金術師ってところかな。

 魔法だと、火と風で雷かな?水と土で木とか?


「実際に使ってみながら説明する方がわかりやすいと思うので、広場に移動しましょうか!」


 シャーナの言葉に僕達は意気揚々と立ち上がった。







 僕達は最初の部屋から出ると、シャーナの案内で木の中をくり抜いたような廊下を進む。

 至る所から木や草や葉が生えていて、光は電気とは違う柔らかな光が天井から等間隔で吊るされている。

 長い階段をいくつも降りて、やっと出たのは広い空間だった。


「お二人がいた部屋は天望の部屋です。祈りを捧げる部屋なので何も無かったですが、この国を最初に見るには一番いい部屋ですね。そして今のこちらが聖樹神殿本堂です」


 グルリと丸く掘り抜かれた空間はかなり広い。

 祭壇だろう場所には聖樹からの湧水らしき水場があるが、不思議な光を柔らかく放っている。

 人もまばらにいて、置かれている長椅子に座って祈る者、水を桶に組む者、小さな子供達も楽しそうに走り回っていた。


「あの水場は聖樹からの恵の湧水です。傷や病を癒したり、魔力や気力を回復する効果があるのですよ」


 ありがたいことです。と、シャーナは水場の方向に軽く両手を組んで祈る。


「あの水は無償なの?」


「?はい!勿論ですよー!聖樹の恵はこの世界のためにあるのですから!」


 当たり前のようにシャーナが笑顔で告げる。

 僕の世界じゃ有り得ない環境なんだよー。大体の人が金取るからね。ここならこの聖堂維持のためとかって、聖職者が金取るのが普通の世界から来ましたから。


「聖堂の維持費とかどうしてるの?」


「維持費ですか?普通に寄付だったり、有志の方々がお手伝い下さったり、あとは私達聖職者も普通に働いてますよー。ここは私達の"家"ですから、家の管理は当たり前ですよ!」


 シャーナの言葉に、この世界は僕がいた世界と考え方が全く違うことを痛感し、そしてこの世界に来て良かったと改めて思った。


「本当に良い世界だよなぁ、ウェヌストピア」


 ジグの言葉に僕は頷いた。


「さ、あそこから外へ出て少し行くと広場になってるので行きましょう!」


 シャーナについて外に出る。


「「うわぁ…」」


 見えた景色に僕とジグは感動に言葉を失う。

 そこは聖樹の根本で、根に挟まれた階段を降りて振り返り聖樹を見上げる。

 本当にめちゃくちゃ立派な樹で、横幅だけで学校の校舎くらいある。

 上はビル何階建てかわからないくらい、天につくくらいデカい。

 …そりゃあれだけ階段が長いはずだよ。

 そして聖樹の周りは木々や花々が咲き、少し向こうには大きな木々に橋を渡してあちこちに梯子や階段のある沢山のツリーハウスが並んでいた。

 土や草そのままの地面には露店だろうテントが並び、人々で賑わっていた。人だけじゃなくて魔生物だろう見た事ない生き物も、僕の世界にもいた犬や猫、馬もいる。

 正に活気のある景色。

 人々が笑い合い、生き物が自然に生き、自然と共存している。


「この国、聖樹の国は世界最古の聖樹に寄り添って国を作り、自然との共存を最初に叶えた国と言われてます。いつも皆が笑顔でいれるのは、聖樹が私達を迎えてくれたからだと」


 また後で街をご案内しますね、とシャーナに促されて聖樹の根っこ沿いに街とは反対に向かうと、土が剥き出しになっている広いスペースに出た。


「ここは催事を行う際に使う広場なのですが、この間催事が終わった所なんで空いてるんです。では!始めてみましょうか!」







 先ず魔法には火、水、土、風の四属性に、光と闇の反発属性、そして無属性がある。

 四属性は合わせることで雷や木、氷、金と合成魔法が使えるが、基本的に相性の良い属性持ちは少ない。他の人の魔法と合わせることも可能だが、余程魔力の波長が合わないと先ず不可能だ。

 そして光と闇。反発属性と言われるくらい相性の悪い属性であり、他の四属性とも合成するのは不可能である。

 光は俗にいう癒しの魔法だ。治癒魔法というとわかりやすいだろう。自身以外なら癒すことが可能である。

 だが闇属性だけは癒すことができず、やろうとしても跳ね返されてしまう。

 反対に闇属性は吸収して自身を癒すことができる。他人でも植物でも何からでも魔力気力精力を吸収できるが、唯一与えることもできる。因みにこれにより魔族は世界に魔力気力精力を与えて世界のバランスを調整していた。

 そして唯一、光属性からだけは吸収することが出来ず、逆に与えることだけができる。

 そして無属性。

 これはどの属性ともある意味相性が良く、ある意味相性が悪いとも言える。

 無属性だけは魔力の形が違い、他の属性の邪魔をしないが、代わりに交わることもできない。

 そして他の属性にはない魔法を作る。


「例えば私のこれは"アイテムボックス"何でも収納出来て便利なんですよ」


 そう言いながらシャーナがまた指をクルリと回すと、光が舞い背凭れのあるベンチが出てきた。


「思ったんだけど、魔法使うのに、呪文とかってさ、いらないのか?」


 少しは慣れてきたのか、少し辿々しいながらもジグがシャーナに質問する。


「呪文を使う人もいますが、使わない人もいます。基本的に魔法はその人の想像力次第で形を変えるものなのです。…そうですね、私は土魔法も使えるので、実際見てもらいましょうか」


 そう言うと、シャーナはその場にしゃがむと両手を地面に付けて目を閉じる。

 手から淡い光が広がり土に吸い込まれると、そこがもこもこと盛り上がってきてみるみるうちにシャーナの背丈程の長方形の土の壁が出来上がった。


「これは呪文にすると"ウォール"といって、土の壁を形成します。これは私の想像から出来てるので、人によっては楕円形だったり、人型なんかにしたりと様々です」


 シャーナは土壁から少し離れると、手の平を土壁の方へ向けた。


「"ストーンバレット"」


 シャーナの手の平からまた淡い光が出てくると、石礫が形成されて、真っ直ぐに土壁に勢いよく放たれた。

 ドゴッと音を立てながら石礫が土壁にめり込む。


「私は土魔法と無属性魔法に適性はありますが、土魔法の方は少し苦手なので、呪文を唱えるか唱えないかで威力が変わります」


 そう言うと、今度は呪文無しでストーンバレットを打ったが、石礫は今度はめり込んだりせずに土壁に当たって落ちた。


「なるほど」


「結構差が出るんだねー」


 ジグと石礫を見比べると、石礫の大きさも呪文有りと無しじゃ明らかに違った。


「魔法を使うには想像するだけ?」


「いえ、最初は自分の中にある魔力を感じて、それを体に流していくイメージで、次に外に出して形作るように魔力を出します」


 シャーナの話を聞いて、僕とジグは少しお互いに目を合わせると、取り敢えずやってみるか、とお互い目を閉じて自分の体にある魔力とやらを感じてみることにした。


 自分の呼吸、血液を感じるように集中する。


 何か今まで感じた事のない温かさを感じた。

 確かに自分の中に流れる、血液のような何か。

 今までになかった感覚だが、不思議と気持ち悪さは感じず、寧ろ心地良さを感じる。

 これが魔力なのだろうか。

 シャーナが言っていたように、体に自分の意思で流すようにイメージする。

 先ずは指先に行く流れを止めたり流したり、次に足に行く流れを止めたり流したり、そして魔力を一箇所に留めるようにする。

 そして手へ魔力を集中させる。

 先ずは、そうだな、水球を作ってみたいから、水を丸く丸めるイメージを込めよう。


「す、すごい…!すごいですお二人とも!!」


 シャーナの声にイメージを切らさないように目を開けると、両掌の間にサッカーボールくらいの水球が出来ていた。

 おぉ、マジで魔法使えてるよ。

 隣を見てみると、ジグも両掌の間にも同じくサッカーボールくらいの大きさの火球が出来ていた。


「で、できたっ…!」


 ジグは目を輝かせて嬉しそうに火球を見て、僕に目を向ける。


「やったねー」


 へらりと笑いながら、ジグに言うと、ジグは更に嬉しそうに笑顔を浮かべて頷いた。

 さて、じゃあ次は消さないとなぁ、と水球に使った魔力を体に流しなおして水球を消す。

 ジグも同じように火球を消していた。

 次はどうしようかと、シャーナに目を向けると、シャーナは目が溢れそうになるくらい見開き、口をぱかりと開いて驚いた顔をしていた。


「え……えっえ!?お二人今何しました!?消しました!?今、魔法を自分で消しました!?」


 詰め寄ってくるシャーナに、ジグは思わず自分より小さい僕の後ろに隠れて、僕自身もシャーナの勢いに驚いて少し背中を反らせる。


「え、うん、普通に魔力を体に戻したけど…」


「うん、俺も…。シャーナ、さんが、体の魔力を流すようにって言ってたから、流れを体に戻した、けど…」


 ジグの説明に、シャーナは興奮を抑えるよに息を吸って吐くと、詰めていた体を離してくれた。


「すみません、あまりにも驚いてしまって…。自身から出した魔力をまた戻すなんて、かなりの上級技なんですよ。私だって出来ませんし、そこまで魔力の流れを感知して操るなんて、しかもお二人は今初めて魔法を使ったのでしょう?」


「うん、魔力なんて概念、僕の世界じゃファンタジー、空想の産物だったねー」


「同じく」


 僕の話にジグも同意を示す。


「空想…」


 ポツリと呟くと、シャーナは顎に指先をあてて考えるよう視線を明後日に向ける。

 何か思う事がある様子のシャーナに、僕とジグは顔を見合わせて首を傾げながらも、シャーナを邪魔しないように待つ事にした。


「……転移者であるお二人の世界では魔法は空想上の物、ということは、"想像"が当たり前であったりしますか?」


 意識をこちらに戻したシャーナの質問に、そうだね、と答える。


「なら、魔法の固定観念が無いからなのかもしれないですね」


「…あぁ、そういうことか」


 シャーナの予想に僕は納得して頷く。


「え、何?どういうこと??」


 首を傾げるジグに僕の考えついた内容を説明する。

 僕やジグの世界では魔法は存在せずに空想の、つまり想像から出来たものだ。

 ゲームや本や、色々な情報源はあるものの、確定した固定観念は存在しない。

 例えばとある人の作る話では呪文一つで魔法が使えたり、ある人は詠唱が、ある人は歌で、ある人は指の振り、棒の振り一つでと、魔法の話を作る人によって魔法の出し方一つ違っている。

 魔法で龍が作れたり、洗濯物や掃除を勝手にしてくれたり、それこそ魔法があればこんな事をしたい!なんて、誰でも一度は考えたことがあるだろう。

 だがこの世界では魔法は当たり前のようにあるもので、当たり前のようにあるものには固定観念がある。

 火魔法はこういうもの、水魔法はこういうもの、魔法とはこういうもの、というような固定観念だ。

 それが当たり前だと、"想像力"で形を変える魔法であるこの世界の魔法も、決まった形になるのだ。

 つまり"新しく想像する"というものが無くなり、想像力は別のものに向かう。

 当たり前にあるものを変えようとする人なんて早々いないだろうし、先ず僕達みたいに最初からやる人自体がいないだろうからね。


「そんでこの世界では小さい時からちゃんと教育していたから、下手に別の危険性があることをさせようとする人も、しようとする人もなかったんだろうねー」


 平和な証拠でもあるからいいことだよね。

 僕の話で納得出来たのか、ジグもなるほど、と頷いていた。


「こうなると、私に教えられることってないですね…」


「あはは、でもスキルはどうしたらいいの?」


「それに関しては常時発動状態みたいなものなので、生活の中で徐々に上達していって、ふとした時に何かいつもより上手く出来たな、とか、最近筋力上がったなぁ、とか思った時に今日みたいに見てもらうとスキルが進化してることがあります。因みにユウさんは鑑定持ちなので、取ろうと思えば私と同じ資格が取れますよ」


「じゃあさっきのシャーナのやってのは鑑定?」


「そうです。鑑定のスキルを、一定種以上かつ各種一定回数以上使ったら、人も鑑定できる"解析"が身につくのですけど、プライバシーの侵害になっちゃうので、資格を取って水晶を媒介にしないとダメなんです。まぁ種類が特殊な物ばかりなので、教習所にでも入らなければ早々身につくものではないので安心して下さい。もし"解析"が発現してしまってもギルドか教会に頼めば制御リングが貰えるので大丈夫ですよ」


 え、何それ絶対いらない。でも鑑定は便利そうだ。まぁ、ないだろうけどもし発現したら即行でギルドか教会行こう。


「あと鑑定みたいな特殊スキルは慣れるのに時間が掛かるんですけど、ユウさんなら大丈夫だと思うので省きますね!」


 良い笑顔で普通に言ったよこの子。いやいいけどさ。

 何気ジグがわかるわー、って感じで頷いてるし。

 いや確かに順応力も理解力も高い自覚はあるからいいけど。


「基本的にスキルも使っていて身につくものなので、ジグさんの身体強化も特殊スキルなんですが、生憎と私は使えないですし、周りに使える方もいないので、本で読んだ知識だけでもお話しますね」


「あ、うん、それで大丈夫、です。あとは道中とかで使ってみて試し、ます」


「わかりました。身体強化は魔力と似たような使い方らしいのです。強化したい場所に力を集中させて、筋力や肉体を強化するそうです」


 魔法みたいに感覚的なやつかな。

 たぶん僕の探索や調合も感覚的なやつだろうな。

 結局スキルは使ってみて知るのが早いのだろう。


「わかった、また試して、みます」


「だねー。んじゃ、大体理解したし、僕は早くこの世界を周りたいかな」


 さっき街を見てすごくウズウズしてるんだよね!


「もう行かれるのですか!?」


「流石に何の支度も無しにはいかないよー。取り敢えずギルドの登録かな。先立つものが無いからね、まずは金銭と物品の確保。あ、そういえば、この世界に身分証とかってあるのかな?やっぱり必要だよね?」


 指折り数えながらシャーナに質問する。


「ありますよ。絶対必要という訳じゃないですけど、あった方が信用だったりとか後々便利だったりします。身分証登録はギルドで纏めてできるので、では次はギルドに向かいましょうか」


「りょうかーい!ジグもいい?」


「おう!ギルド楽しみだし、早く色んなとこ見たい!」


 にひひ、と笑うジグにつられて僕も笑う。

 異世界!ギルド!冒険!旅!楽しいばっかりでソワソワと体が疼いた。

次はギルド!

早く話進めたくて駆け足になっちゃったけど大丈夫かな??

読みにくかったらすみません。

でも満足!

誤字脱字ありましたら教えて下さい。

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