第93話 真実を告白してみた②
地上を大量のパトカーが走っている。
後方にはヘリコプターもいた。
さっそく現在地を特定して追跡してきているらしい。
まあ、配信的には何も問題ない。
僕は気にせず話を続けた。
「公安警察について様々な噂が流れていますが、いずれも実態とは異なります。彼らは権力者の奴隷ではありません……少なくとも表向きの権力者の、という意味にはなりますが」
『ん? どういうことだ』
『誰か解説よろ』
『おっ、陰謀論かぁ?』
『佐藤だから信憑性は高いでしょ』
『また暴露かね』
リスナー達が話題の変化を察知する。
噂や憶測の披露から、僕の話を聞くフェースに移行していた。
「確かに公安警察は国内の権力者に人員を派遣していました。ただし、実際は私兵ではなく監視役の意味合いが大きかったはずです。常里さんの時もそうだったのでしょう」
『政治家を公安が監視?』
『こき使われてるフリだったってことか』
『まじか』
『ありえそう』
『また話が変わってくるぞ……』
僕はゆっくりを笑みを深める。
そして、今まで明かしていなかった一つの事実を口にする。
『虹田さんがカミングアウトしていましたが、公安警察は真の黒幕の下部組織に過ぎません。かつての秘密警察には本当の後継が存在するのです。その組織の名は――」
「全国迷宮清掃協会。通称はメイソウ。よろしくね」
背後から声がした。
バックミラーにオッドアイの美女が映っている。
漆黒のウェディングドレスを着ており、爪や唇も真っ黒だ。
控えめなで笑顔で手を振っている。
一体どこから現れたのか。
直前まで気配すら感じなかったのだが。
何らかのスキルで瞬間移動してきたようだ。
状況的に虹田の仲間か。
「おや」
その美女は狭い車内でエレキギターを掲げていた。
ボディの縁では無数の刃が高速回転し、やかましい稼働音を鳴らしている。
ギター型の改造チェーンソーだ。
最小限のスイングで振り下ろされたギターチェーンソーは天井を削りながら進み、僕の脳天を真っ二つに引き裂いた。
「あばばっばばばばんばばばっばばばばっばばばばばばばばば」
振動で頭が、脳が、揺れる、揺れる。
視界が左右に分かれていく。
凄まじい痛みが顔面を越えて首や胸元まで到達しようとしていた。
吊るしたままの虹田の生首が喜んでいた。