第91話 賞金首になってみた⑪
迷宮人間になる手術には、いくつかの選択肢がある。
まずは移植するダンジョンの数とタイプだ。
数が増えるほど、そして性能や属性が優秀なほど強くなれるが、それに比例して反動が大きくなる。
術後にあっさり死んでしまう者も多いらしい。
僕は危なそうな時期をダンジョンで過ごし、不死身の特性を利用することでやり過ごした。
配信で弱っていることを悟られずに活動するのが地味に大変だった。
「まあ、そんなわけで僕は迷宮人間になりました。非合法の手術なので皆さんは真似できませんし、真似しても自己責任ですのでご注意を」
『気になるけどやらねーよ』
『誰に手術してもらったんだろう』
『闇医者じゃね?』
『手術料はおいくらかな』
『どうせお高いんでしょ』
リスナー達は早くも受け入れている。
もう何が起きても不思議ではないと考えているようだ。
僕はふと助手席に転がった虹田の生首を見る。
片手を伸ばして、額を何度かノックした。
「もしもーし。起きてくださーい」
『何してんの!?』
『ブラックジョークがすぎる』
『死者の冒涜』
『やめたほうがいいよ』
リスナーが止めるのを無視してノックを繰り返す。
三十回を超えた辺りで、いきなり虹田の目が見開かれた。
そして苛立った顔で怒鳴ってくる。
「しつけーよ! 死んだ人間の頭を小突くな!」
「あ、おはようございまーす」
僕は運転しながら笑顔で挨拶する。
虹田は憎々しそうに睨むも、それ以上は何もしてこない。
正確には何もできないのである。
『生きてる!?!?!?!?』
『やば』
『これ迷宮人間の力なのか……???』
『不死身キャラが被っとる』
僕はナイフを虹田の脳天に突き刺した。
そこに魔力糸を巻き付けてバックミラーに吊るしておく。
これで即席ストラップの完成だ。
ただし、虹田が喚いてうるさいので、唇を魔力糸で縫って塞いだ。
配信の音声状況を考慮してほしいものである。
「この人は死んだふりをしてました。重要な臓器を頭部に収納することで、首だけでも生きられる身体になってるんですよ。後ろからしがみついた時の感覚で分かりました」
『そんなことできるのか……』
『確か内臓の位置をずらす魔術ってあるよな』
『ここまで極端なのは知らん』
『迷宮人間の手術でついでにやったのか?』
『それを見抜く佐藤もさすがよね』




