第83話 賞金首になってみた③
身体が天井に激突し、そのままの勢いで激しく転倒する。
今ので全身の骨が折れた。
咄嗟にスマホを守れたのが幸運だ。
配信はまだ続いている。
立ち上がろうとした寸前、けたたましい銃声が鳴り響く。
僕は弾丸を浴びて再び倒れた。
肉体が動かない。
とてつもないダメージで再生が完全に追い付いていなかった。
痛覚が限界を超えて麻痺している。
『なに!?!?』
『撃たれたよ』
『また暗殺者かな』
『佐藤がボコられてる』
『どうせ手加減してるんでしょ』
自動車の横に一人の男が経っていた。
男は軽やかなステップで喜びを表現している。
「やったやったー! 俺っちが一番乗りじゃん! これで給料アップだぁー!」
その男は悪趣味なほどに派手だった。
虹色のスーツを着込み、虹色のサングラスをつけている。
整えられた短髪も虹色で、磨き抜かれた革靴も虹色だ。
とても目に悪いカラーリングである。
どうにか上体を起こした僕は男に話しかける。
「おすすめの服屋さんを紹介しましょうか?」
「必要ないね。俺っちのファッションは宇宙一なのさ」
特に怒った様子もなく、男は虹色の二丁拳銃を構えて発砲した。
その瞬間、僕の全身はさらにズタズタとなった。
男は銃撃を止めずに弾を集中的にばら撒いてくる。
とんでもない発射速度だ。
おまけに一向に弾が切れる気配がない。
たぶん無限弾なのだろう。
スキルの効果か、或いはそういう魔術武器なのか。
どちらにしても厄介すぎる。
僕は地面と一体化するかと思うほど弾丸を撃ち込まれた。
肉も骨もグズグズになって原形を留めなくなった頃、男は感心した様子で拳銃を下ろす。
「すげーな。この状況でスマホを庇えるのか。さすが規格外だ」
「褒めてくださりありがとうございます」
僕は満身創痍のまま走り出してナイフを突き出した。
その途端、男が真顔になった。
「服が汚れるからやめろ」
残り二メートルのところで異変が起きた。
握っていたナイフが高速回転し、僕の指を切り刻んだ。
ナイフは滑るように移動して反対の手もみじん切りにしてしまう。
スマホもナイフも失った僕は、代わりに大量の銃弾を貰う羽目になった。
執拗な銃撃により、もはや人型を保てているか怪しかった。
べちゃりと崩れ落ちた僕のそばで、男は悠々とスマホを拾いあげる。
そしてカメラに向かって元気に挨拶をした。
「俺っちのことは虹田と呼んでくれよな! みんなよろしく!」