第82話 賞金首になってみた②
半ば逃亡生活に近い環境だったが、その間も様々な企画をこなしていった。
どれも印象深く、数字的にも成功だったのは間違いない。
探索者を拉致してアダルトビデオに出演させる違法グループは、リスナーのタレコミで制裁することになった。
ダンジョンでの撮影中に乱入し、彼らの四肢を切断して飢えたオークの巣に放り込んだ。
オーク達にはきっと喜んでもらえたことだろう。
それ以来、似たようなグループの活動が急速に減ったらしい。
死よりも恐ろしい目に遭うかもしれないというプレッシャーで怖気づいたようだ。
見せしめに追加で何度か制裁を加えたのも効いたのだろう。
リクエストされた魔物に挑む企画では、ドラゴンやメデューサ、巨人族といった強力なモンスターとばかり戦わされた。
リスナーが面白がって無理難題を投げてきたのだ。
それに乗ると投げ銭が増えたので、断るという選択肢はなかった。
ただ、難しかったのが戦闘シーンの展開だ。
苦戦せずに倒すと盛り上がりに欠ける。
そのためわざと負傷したりと工夫してみたのだが、これまでの配信で強さが知れ渡っているのがいけなかった。
手抜きだという指摘が相次ぎ、頑張った割に伸び悩む時期もあった。
手に汗握るハラハラした戦いが苦手分野だと発覚した企画だった。
カニバリズムのダンジョンへの訪問企画は、未だに第二弾を希望される人気コンテンツである。
人喰いとなった探索者が徘徊する魔境を僕が散歩するだけの配信だ。
常に襲われるスリルがあり、僕を追跡していた暗殺者が捕食される事故も起きるほど危険だった。
イベント続きの内容で、面白い探検ができた自信がある。
実際、数回に分割したそのシリーズの再生数は軒並み高い。
コメント欄には行ってほしい危険なダンジョンが延々と羅列されている。
モンスターとの戦闘を主軸にするのではなく、高難度のダンジョンの様子を映すことに需要があったらしい。
攻略の参考なったという探索者のコメントもあった。
「皆さんのおかげで、賞金首になりながらも不自由のない生活を送ることができています。今後もリクエストがあれば、ぜひコメント欄に――」
慣れた口調で語る僕だったが、背後からのエンジン音に振り返る。
ダンジョンの狭い通路を突進してくるのは魔力の光を散らす自動車だった。
とてつもない加速に反応できず、僕は自動車に撥ね飛ばされた。