第80話 ドライブデートしてみた③
常里さんの死を確認した僕は、拳銃を捨てて笑う。
そしてカメラ目線で締めに入った。
「さあ、トラブル続きの対談企画でしたが、本日はこの辺りで終了しようと思います。皆さん楽しんでいただけましたでしょうか」
『平常運転で草』
『もっと言うことあるんじゃない?』
『やべーよな』
『放送事故ってレベルじゃねーよ』
リスナーからツッコミが殺到している。
なんとなく雰囲気でどうにかなると思ったが甘かったようだ。
まあ、今回は過去の配信に比べても内容が濃い。
話題性という域を超えている部分も多く、指摘が入るのも当然と言えよう。
そこに小走りのボブがやってきた。
彼は常里さんの死体を一瞥した後、特に気にする様子もなく話しかけてくる。
「おーい、もう片付いたかー」
「やあ、ちょうどエンディングを撮っていたところだよ。そっちはどうだい?」
「いい具合だぜ。もういつでも使える」
自信満々なボブは、小脇にサリスを抱えていた。
無抵抗で運ばれるサリスの頭部には、青黒い巨大な芋虫が張り付いていた。
不気味に脈動しながら彼の顔面全体を覆っている。
その芋虫は傀儡蟲と呼ばれる魔物だ。
寄生能力を持ち、宿主を意のままに支配する習性を持つ。
ただしボブは【操蟲術B】を取得しているため、傀儡蟲も支配されている状態だった。
「別に死体からテレポートのスキルだけ抜く形でもよかったんだがね。まだ利用価値があるだろ」
「そうだね。殺すのはもったいないかな」
『また何か企んでる……』
『モラル崩壊』
『非人道的って言葉も生ぬるい』
『悪役のセリフなんよ』
僕達のやり取りを聞いたリスナー達は呆れ果てている。
そんな彼らをスルーして、僕はカメラに向かって手を振った。
「色々と慌ただしくなると思いますが、変わらず配信を見てくださると嬉しいです。ではお疲れ様でしたー」
『おつ』
『夜道に気を付けろよ』
『面白かった』
僕とボブはサリスのテレポート能力を発動してスタジオから立ち去った。
『あっ、常里が殺人容疑で指名手配だって』
『は?』
『佐藤じゃなくて?』
『なんか秘書を殺した罪らしい』
『冤罪かね』
『口封じができなかったから犯罪者に仕立てたのかも』
『よくわからん』
『何にしても闇が深いなぁ』