第77話 大物政治家と対談してみた⑩
三十分後、僕の前には瀕死のサリスが倒れていた。
度重なる拷問で精神崩壊を起こしており、曖昧な意識のまま動かない。
拷問に耐える訓練を経験しているようだったが、絶大な苦痛を再生しながら味わうのは次元が違う。
結局、十分くらいで限界が来ていたと思う。
それにしても【超人化A】を持つ人間を痛めつけるのは少し苦労した。
僕が【部位破壊A】や【解体技術A】で防御力アップやダメージカットを無視できなかったら、さらに難航していたことだろう。
どちらも相手を直接的に殺すためのスキルではなく、他に火力に直結するスキルがないと真価を発揮できない。
しかし、面倒なガード能力を突破しやすい性質を持つため、普段から愛用するほど気に入っている。
サリスはいつまでたっても傷が治らない。
メンタルの不調で自動回復が麻痺しているのだろう。
僕はサリスの顔面を踏みながら打ち明ける。
「常里さんの口封じの要員が来るのは想定済みでしたよ。というか、そのための暴露配信でしたし」
サリスは反応しない。
聞こえているはずだが思考能力が止まっているらしい。
僕は顔を近づけて告げる。
「運び屋サリス……実は公安警察のエージェントなんですよね。神スキルを手に入れて暗殺要員に転向したんですか? 半端な実力なんで辞めた方がいいですよ」
「……っ」
サリスが何か言おうとする。
しかし、それだけだった。
明確なアクションを起こせずに彼は気絶する。
最後の言葉がそれほどショックだったのだろうか。
念のためにサリスの手足の骨を砕いていると、頭上からボブが降ってきた。
崩壊に着地したボブは、サリスを見て目を丸くする。
「おいおい、小細工抜きでこいつをぶっ倒したのか。相変わらず規格外だな」
「意外と粘られたけどね。おかげで時間がかかったよ」
僕はボブから受け取った鎖でサリスを拘束していく。
この鎖にはスキル封印の効果がある。
仮にサリスが復活したとしてもこれでもう行動できない。
「スタジオの外はどうなったかな?」
「警察やら自衛隊やら特殊部隊が攻めてきたが、まとめて追い払ってやったぜ。故障した結界とゴーレムの代金は今月中に払ってくれよな」
「大丈夫さ。今回の配信でさらに大儲けできたからね」
「ハハッ、そいつは羨ましい」
拘束を済ませたところで、僕は上階に続く階段へと向かう。
サリスを担いだボブが話しかけてきた。
「どこに行くんだ?」
「配信のフィナーレを飾ってくるよ」
微笑んで答えた僕は、最初のスタジオへと移動した。