第76話 大物政治家と対談してみた⑨
派手な崩落により、気が付けば広大な地下空間にいた。
あちこちに結界の術式が張られて管理されているのが分かる。
遠くにいる魔術師らしき人間が大慌てで逃げ出していた。
空気が変わった感じから考えるに、このスペースがダンジョン部分の本体なのだろう。
僕は持っていたスマホを確認する。
「ふむ……」
画面が割れてフレームが少し歪んでいるが、幸いにも配信は継続していた。
なるべく破損しないように気を付けた甲斐があったようだ。
今回、何気に一番神経を使ったのがスマホの保護だったかもしれない。
僕は足元に視線を移す。
そこにはサリスが埋まっていた。
ボロボロの黒スーツを着て悔しそうに震えている。
だから僕は挑発気味に声をかけた。
「あのー、生きてます? もうちょっと盛り上げたいので死なれると困るのですが」
「……馬鹿げた力だ。全力でやってもまるで底が見えない」
サリスの腕が持ち上がって僕の脚を殴る。
割り箸のようにあっけなく骨が折れて筋肉が裂けた。
何度もバウンドして転がった僕は、深呼吸をして立ち上がる。
その間にサリスも地面から這い出ていた。
与えたダメージの大半が既に回復し、あまり消耗した様子はない。
しかし、精神面は別だ。
執拗な攻撃によってサリスの心は疲弊していた。
それに気づいた僕は鼻を鳴らして笑う。
「あっ、もしかして自分のこと最強だと思ってますか?」
サリスが瞬時に魔剣で斬りかかってきた。
僕は斬撃で顔を削られながら、カウンターの拳を鳩尾にねじ込む。
内臓の潰れる音が連鎖した。
「――とんだ勘違いですねえ」
飛んでいったサリスに圧し掛かって首に噛み付く。
サリスは恐怖と痛みに叫んだ。
僕は口の周りを地で汚して笑う。
「スキルには適性があります。自分に合わない能力は使いこなせないものなんですよ」
馬乗りになって肘打ちを浴びせる。
何度も何度も何度も何度も同じ威力とペースで繰り返した。
自動で回復しているはずなのにサリスの防御が手薄になってきた。
「たとえばスキル石が分かりやすいですね。手軽に強くなれますが、適性がなければ効果を十全に発揮できず、成長性が見込めません」
サリスの歯をつまんで折る。
一本ずつ丹念に破壊していった。
反撃で胴体に穴を開けられたが気にしない。
骨や内臓はとっくに消滅している。
「あなたは戦闘タイプではありませんね。そんな人が【超人化A】を使いこなせるわけないじゃないですか」
『佐藤の説明って本当?』
『確かに適性はあるけど言うほど変わらない』
『レアスキルなら適性とか無視でゴリ押しできるでしょ』
『結論:佐藤が強すぎるだけ』
骨が露出した指をサリスの目に刺して掻き混ぜる。
絶叫が木霊した。




