第73話 大物政治家と対談してみた⑥
「公安警察の不正が明らかになったところで次の質問にいきましょう。まだまだ暴露していきますよー」
『やった~』
『マジで最高』
『佐藤キツネは神』
『歴史に残る配信になりそう』
罰が嫌な常里さんは公安警察を売った。
もう少し吐かせるのに時間がかかると思っていたので、ここまでスムーズに成功するとは思わなかった。
想定よりも常里さんの忍耐力が弱かったようだ。
まあ、尋問に手間取って配信がダレなくてよかったと思う。
僕は金鎚で椅子の背もたれを小突きつつ質問を続けた。
「常里さんはダンジョンの抗議団体と繋がりがありますね。それなのにダンジョンの私有地を持っていますが、向こうから文句は出ないのですか?」
「あの団体は金さえ払えば素直になる。所属する人間の大半がレベルやスキルに恵まれず、その嫉妬や鬱憤に大義名分を被せて正当化したいだけなのだ。正義のふりをしたクズどもというわけだなっ!」
「ふむふむ。随分と見下しているのですね」
「当然だろう! 奴らは信念のない迷惑グループだ!」
常里さんがヤケクソになっている。
下手に逆らわず、すべて喋ってしまった方が楽になると考えたらしい。
守秘義務なんて放り出しているのが丸分かりだった。
いい調子だ。
このまま質問をエスカレートさせていこう。
そう考えた時、胸に鋭い痛みを覚えた。
見れば刃が飛び出している。
経常的に西洋の剣だ。
表面に魔術的な紋様が刻まれており、仄かに光を発している。
「おっ」
剣が引き抜かれた拍子に僕は転倒する。
胸の傷口からドバドバと大量の血が流れ出していた。
的確に心臓を貫かれている。
しかも何らかの魔術で再生能力が働いていないようだった。
これでは傷が治らない。
僕は床を這う。
喉奥からせり上がる血を吐いて足掻いた。
(いきなり誰だ?)
そこに立っているのは、黒スーツの地味な顔の男だった。
剣を持って冷徹な目で僕を見下ろしている。
感情のない殺人者の眼差しだ。
運び屋サリス。
タイムアタックの企画で優勝した男がそこにいた。
突然現れたのは、彼の持つ【テレポートS】の効果だろう。
そうでなければ説明が付かない。
『えっ』
『佐藤が刺された』
『配信トラブル?』
『やりすぎて消されたか』
『当然の結果』
サリスは拘束中の常里さんを見る。
そして頭上に剣を掲げると、無造作に振り下ろした。