第70話 大物政治家と対談してみた③
僕は常里さんの口を塞ぐガムテープを勢いよく剥がす。
その痛みで常里さんが目覚めた。
彼は辺りを見回して叫ぶ。
「こ、ここはどこだ!? どうなっているッ!」
「落ち着いてください。放送中なんですから」
「貴様、何を言っているんだ! おい、お前らが解放しろォ!」
常里さんがスタッフを怒鳴り付けるも、助けようとする者はいない。
ここで下手に動けば、僕が危害を加えてくると知っているからだ。
ただの脅しでないことは過去の配信で知らしめている。
怒鳴り続ける常里さんを横目に、僕は彼の紹介に進んだ。
「僕の配信を見ていない方もいらっしゃると思うので改めて説明します。この方は政治家の常里さんです。今回の番組のゲストですね。一緒に頑張っていくのでよろしくお願いします」
「ふざけるな! 貴様、こんなことをしてただで済むと思っているのか。すぐに警察が突入して貴様を逮捕するぞ!」
常里さんの怒りをスルーしつつ、僕は静かにナイフを取り出した。
刃の腹で常里さんの頬をぺしぺしと叩く。
「僕はあなたを簡単に殺すことができます。それをしなかった理由は何だと思いますか?」
「…………」
常里さんの顔に緊張が走る。
僕はその場で飛び跳ねながら大声で答えを明かした。
「あなたを使って暴露配信をするためですよ! 政治家の告発は話題性がありますからねえ。これを逃す手はありませんでした」
常里さんやテレビスタッフが呆気に取られている。
ここまで何をするかは伝えていなかったのだ。
露骨に焦る責任者達は、どうすべきか小声で話し合っていた。
「番組の流れはシンプルです。僕が質問をするので、常里さんはそれに答えてください。ちなみに嘘をついたら罰が下ります」
「何ッ」
「あなたには遺品商ボブから購入した【正直者C】スキル石を使いました。このスキルは言葉に重みがかかり、命令や説得の成功率が上がりますが、嘘をつくと吐血するデメリットがあります。今回はそれを利用することにしました」
そう告げると、常里さんの顔面が青ざめた。
自分が何をされたのか理解し、もう手遅れだと察したのである。
僕は優しく微笑みかける。
「常里さんは真面目な方だとお聞きしているので大丈夫ですよ。嘘が言えないなんて、政治家として素晴らしいスキルですね!」
スタジオ内に僕の笑い声が響き渡っていた。