第7話 闇バイトをぶっ潰してみた⑦
僕は闇バイトのリーダーの背中を踏みつける。
揺らしても反応はない。
こういう場合、何らかのスキルで逆転を狙う者がいるのだ。
魔術を使える者は特にその傾向があるため、気を抜いてはならない。
『うへぇ』
『グロすぎ』
『リーダーが死んじゃった』
『このひとでなし!』
スマホのカメラワークは完璧でバッチリ死体が映っていた。
戦いながら立ち位置をチェックした甲斐があったようだ。
僕は三脚を掴んで自撮りアングルでピースサインを作る。
「いやー、強かったですね。危うく殺されるところでした」
『嘘つき』
『余裕あるやん』
『闇バイトも相手が悪かったね……』
『同情勢が出てきて草』
コメント欄の反応も悪くない。
中には僕のことを心配する者もいた。
『ところで傷は大丈夫? 不死身でもキツそうだけど』
「ご安心ください。僕は【再生E】を持ってますので、大怪我でも徐々に回復します」
新たなスキルの紹介を聞き、またもやリスナー達が盛り上がった。
スキルに詳しい人間が熱心に解説している。
『不死身と再生のコンボか』
『シナジーが神』
『でもEランクなら雑魚じゃない?』
『再生は話が別』
『レアスキルだからね』
『咄嗟の回復には使えないけど便利』
なかなか真っ当な意見が多いのが意外だ。
もっと見当違いな解説が出てくるかと思った。
膨大なコメントを横目に僕は配信の締めに入る。
「さて、闇バイトの組織を壊滅させられたので、今回は終わりにしましょうか。また近いうちに配信するのでぜひ来てくださいね」
『えー』
『もうおわるの?』
『ダンジョンの奥が見たい』
『栽培されてるヤクは?』
「薬物は興味ないので燃やしておきます。武器とか使えそうな道具類は拝借しましょうか。面白いものが見つかったら紹介しますね」
コメント欄は不満そうだが、もう配信はピークは超えた。
探索ばかり撮ってもつまらないからだ。
この奥に人の気配はなく、配信を閉じるにはちょうどいいタイミングだった。
何かあれば配信を再開すればいい。
「それでは皆様、最後までご視聴いただきありがとうございました! 高評価とチャンネル登録もお願いしまーす。さようならー」
『おつ』
『面白かった』
『これはバズる』
『佐藤最高!』
僕は画面の配信終了ボタンをタップした。




