表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/134

第64話 暗殺中継をしてみた⑥

 鼻歌を奏でながらスポーツカーを運転する。

 法定速度を無視した猛スピードだ。

 途中、何度も事故を起こしそうになりながらも、大きなトラブルもなく移動を続ける。


 そうして辿り着いたのは、畑だらけの田舎だった。

 砂利道の道路の先には、古風な外観の屋敷がそびえ立っている。

 屋敷の周囲は黒スーツの集団と警察が集まっていた。

 政治家が用意した戦力だろう。

 おそらくあの位置は既にダンジョン内と判定されており、各種補正が発生しているに違いない。


 対する僕はまだ常人のスペックだった。

 向こうの戦力は屋敷を中心に五十メートルほどに密集していた。

 つまりその辺りまでがダンジョンの範囲なのだ。

 ダンジョンに入るまでは、とても勝負にならないシチュエーションである。


『絶望的な戦力差』


『思ったより向こうが強い』


『用意周到だな……』


『降参した方がよくない?』


 黒スーツと警察が一斉射撃を始めた。

 僕がダンジョンに踏み込む前に仕留めるつもりらしい。

 実に堅実な作戦であった。


 僕は頭を下げながらスポーツカーを全速力で走らせる。

 数え切れない銃撃と爆発を左右に避けながらひたすら突進した。

 僅かにでもスピードを緩めれば即死する。

 それを理解しているからこそ躊躇なく突貫するのだ。


『いやいや無茶だろ!!!!』


『死ぬからやめろ』


『佐藤キツネ、オワタ』


『自殺行為で草』


『死なないで』


 屋敷からタンクトップ姿の大男が出てきた。

 大男は両腕でトラックを持ち上げている。

 それを雄叫びと共に投げつけてきた。


 回転するトラックが僕の乗るスポーツカーに激突した。

 シートベルトを着けていなかった僕はたまらず宙を舞う。

 今ので全身の骨が折れてしまった。


 吹っ飛んだ僕に向かってさらに銃撃が叩き込まれる。

 反撃の余力などあるはずもなく、僕はあっけなく全身を引き裂かれた。


 そうして意識が途切れる寸前、肉体に変化が生じる。

 無尽蔵の力が湧き上がってくる。

 細胞がどんどん回復していく感覚もあった。


 吹っ飛んだ僕はそのままダンジョンの領域内に侵入したのだ。

 片手にはスマホがあり、運よく壊れずに配信を続けている。

 眼下では黒スーツと警察が「しまった」という顔をしていた。


 落下する僕は血だらけの顔で笑う。

 ようやく思う存分に殺戮ができそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] 主人公がダンジョンの恩恵を受けられる様にする戦法、かなり際どかったな。 あと、件の政治家。 ダンジョンを忌み嫌う抗議団体に手を貸してる割には…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ