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第61話 暗殺中継をしてみた③

 新たな襲撃者を見ても、僕は極めて冷静だった。

 これくらいの状況は慣れ親しんだものである。

 ダンジョン関連の補正が無くともやっていけるように鍛えており、正直そこまで劣勢だとは思わない。

 向こうの戦力が大して強くないからだろう。

 数ばかり揃えても意味がないということを教えてやらねばならなかった。


「ここからさらに激しくなりますよ。ぜひぜひ配信のリンクを拡散してくださいねー」


 呑気に宣伝しつつ、僕はアクセルを踏み込む。

 トラックとの距離は開かない。

 馬力の差が歴然だからだ。

 むしろ徐々に車間を詰められており、今にも追突されそうだった。


 トラックの助手席からマシンガンが現れた。

 ハンドルを勢いよく切った直後、銃声が鳴り響く。

 車体に連続で弾が当たる音がしたが、走行するのに問題はない。


 僕は姿勢を低くしながら急ブレーキを踏む。

 減速した車は甲高い摩擦音を立てながらトラックの真横に移動した。

 その途端、トラックがぶつかってくる。


「おっと」


 高速道路の壁面に押しやられて側面が擦れた。

 火花が散り、車体が潰れそうになる。

 嫌な軋みがそこかしこから鳴り、タイヤの調子も少し変だった。

 ハンドルもガチガチに固くて動かない。


『ひえー』


『大ピンチ!!!』


『放送事故……』


『もう無理じゃん』


『佐藤キツネ、死す』


 諦めるリスナーを横目に、僕は別に慌てていなかった。

 最低限の武器をバッグに詰めると、スマホを持って車の天井を開いた。

 そこから外に出て、トラックの助手席に飛びつく。

 マシンガンを持つ襲撃者はびっくりしていた。

 僕は穏やかに挨拶をする。


「どうも、こんにちはー」


 撃たれる前にナイフを突き出す。

 刃先が襲撃者の喉を貫き、横一線に切り裂く。

 迸る鮮血を浴びながら、僕はその男を車外へ引きずり落とした。


 代わりに助手席に座ると、運転手の男が真っ青な顔で銃を向けてきた。

 僕はその手を弾いて狙いをずらしつつ、相手の顔面を蹴り飛ばす。

 怯んだ隙に胸を滅多刺しにした。


「お疲れですよね。運転を交代しましょう」


 瀕死の運転手を外に落として、僕は血だらけの運転席に座る。

 ダッシュボードにスマホを置いて配信が続いていることを確認する。

 今の接近戦が撮れれば盛り上がったのだが、さすがにブレブレだったらしい。

 少し残念に思いつつ、僕はトラックを加速させた。

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[良い点] ハリウッド映画ばりのアクション
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