第60話 暗殺中継をしてみた②
僕は高速道路に入り、他の車を追い抜かしながらスピードを上げていく。
行き先は抗議団体の本部だ。
ホームページに住所が記載されていたので特定は簡単だった。
これだけ迷惑を被っているのだから、文句を言ってやらないと気が済まない。
首謀者を拷問する配信でもすれば再生数が伸びるだろうか。
「襲撃は予想してましたけど、思ったより早いですね。よほど恨みを買ってしまったようです」
『それにしたってヤバいよ』
『実力行使にもほどがあるな』
『佐藤キツネが消される』
『配信してる場合じゃないような……』
『こういう時だからこそ配信するんだろ』
抗議団体の暗殺は理に適っている。
ダンジョンの外ならば、スキルやレベルの補正が働かないからだ。
したがって今の僕はただの人間で、致命傷を負えば普通に死んでしまう。
不利な環境を避けて仕掛けてくる点については妥当な判断と言える。
「リスナーの皆さんも、抗議団体について何か分かったら教えてください。僕は調べる余裕がないのでお願いします」
『任せろ』
『やってやるぜ!』
『特定班、頼んだぞ』
『SNSで拡散してくる』
『俺も俺も』
リスナーの頼もしい返答を見ていると、横を走る車がいきなり発砲してきた。
運転手が僕を睨みながら拳銃を撃ちまくっている。
狙いは大雑把で当たる気配がないものの、放置するほど僕は優しくない。
「やめてくださいよ。レンタカーなんですから」
後部座席から引っ張り出したショットガンを片手で発砲する。
散弾に頭を撃ち抜かれた運転手はハンドルに突っ伏した。
車はハードレールに衝突して派手に横転し、後続の車を巻き込む大事故へと連鎖する。
僕はショットガンを膝の上に置いて苦笑する。
「いやはや、近頃は物騒ですねえ。ダンジョンの方が安全ではないでしょうか」
『ほんまそれな』
『アクション映画みたいだった』
『俺の知ってる日本じゃない』
『有名税だよきっと』
『Dライバーになった洗礼……なのか……?』
『何かの陰謀かもね』
僕は腕時計を見る。
夜明けはまだまだ先だった。
小さく嘆息したところで、サイドミラーに不審な大型トラックが映り込む。
加速するトラックは、車間距離など度外視して接近しつつあった。
運転手と助手席に乗る人間からはそれぞれ殺意を感じる。
やれやれ、なかなかスリリングなドライブ配信になりそうである。