第6話 闇バイトをぶっ潰してみた⑥
僕は散弾銃を構えて発砲する。
男は素早く動いて回避し、一部は鉈でガードした。
銃口の向きから射線を予測で対処したのだろう。
言葉で解説するのは簡単だが、実践するのが困難なのは言うまでもない。
男はとてつもない反応速度を有している。
『今の避けるんだ』
『映画みたい』
『すげー』
『動体視力とかのスキル持ちだろ』
『あと防御系スキルな』
銃撃を防いだ鉈持ちの男は冷静だった。
先手を取られても動じず、ペースを乱さずに歩み寄ってくる。
それなりに対人戦闘の経験があるらしい。
いきなり突っ込んでくる他の者達とは別格である。
弾の尽きた散弾銃を捨てて、僕は穏やかに話しかけた。
「あなたがここのリーダーでしょうか。部下を使って僕の実力を測ってましたね?」
「よく分かったな」
「態度と目付きが露骨だったので」
僕はニコニコと笑顔で応じる。
男も低い声で笑っているが油断も隙も感じられない。
どうやって僕を殺すか頭を巡らせている最中なのだろう。
張り詰めた気配は氷のように冷たく、全身から殺気を放射していた。
『どうなるんだ?』
『ハラハラする……』
『勝てよ佐藤』
『闇バイトのボスもがんばれ~』
男が鉈を胸の前で構えた。
刃先をゆらゆらと動かしつつ淡々と述べる。
「何者か知らんが、ここで死んでもらうぞ」
「お断りします」
答えた僕は地面を蹴って突進する。
途中、リュックサックから手斧を取り出すと、最小の動きでナイフを投げた。
男は難なく鉈で弾き、間合いに入った僕の首を断とうとする。
Bランクの【不死身】は完璧な性能ではない。
斬首されればアウトなのを男は知っているのだろう。
「狙いは良いですが甘いですねえ」
迫る鉈を前に、僕は空いた片腕を差し出した。
鉈が肘付近に食い込み、一瞬で腕を断ち切ってしまう。
ところが予期せぬタイミングで骨に当たったことで、斬撃の軌道が僅かにずれた。
結果、鉈は首筋を掠めただけで切断には至らない。
片腕を捨てた僕の奇策に男は驚愕する。
「なっ……」
「はい、終了でーす」
僕は手斧を横殴りのフルスイングで叩きつける。
分厚い刃が男の目元にめり込み、そのまま力任せに切り飛ばした。
皮膚と頭蓋の一部が宙を舞い、衝撃で脳味噌が弾ける。
闇バイトのリーダーである男は、何か言いたげな表情のまま崩れ落ちた。