第58話 ダンジョン大会を開催してみた⑬
リプレイ映像は、死屍本さんが僕のインタビューを受けているシーンから始まっていた。
カメラの視点が切り替わり、コースのスタート地点をズームで映す。
黒スーツのサリスがひっそりとボタンを押して動き出していた。
タイム計測がされているにも関わらず、誰も彼に気付いていない。
『これは見逃すわ』
『コメントで何人か気づいてたね』
『レイちゃんしか見てなかった』
『俺はわかったぞ!』
『嘘つけ』
サリスはボタンを押した直後にいきなり姿を消す。
カメラが切り替わってゴールを映すと、そこにはサリスが立っていた。
映像のタイムラグは存在しない。
忽然と消えたサリスは、ほぼ同意にゴールに移動していたのだ。
ちなみに計測されたタイムは一秒だった。
『というか、これ瞬間移動してるよな?』
『超スピードって感じじゃない』
『もしや時間停止……?』
『さすがに違うだろ』
コメント欄も混乱に包まれている。
大会の結果発表が大荒れになってしまった。
その元凶のもとまで歩きつつ、僕は少し非難を込めた目で話しかける。
「できれば僕の進行で挑戦していただきたかったんですけどね。それでもちゃんとクリアしている以上、記録は無効にしません。何より失格にしたら面白くないですし」
「…………」
「どうして勝手に挑戦したんですか?」
「……この茶番に嫌気が差した」
「そうですか。でも格好つけて協調性を欠くのは感心しませんよ。リスナーのクレームを受けるのは僕なんですから」
僕は苦笑して、サリスに軽く殺意を向ける。
眉を動かしたサリスは瞬時に瞬間移動し、僕の背後に回り込んでいた。
その挙動にも特に動じず、僕は何気なく質問をする。
「ちなみに使ったのはどんなスキルを教えていただけますか?」
「別に。ただの【テレポートS】だ。仕事柄、愛用しているうちにカンストした」
憮然としたサリスの発言に、リスナー達の驚きが限界を突破した。
配信に遅延が生じそうな勢いでコメントが投下される。
『Sランク!?!?!?!』
『神スキルだ!!!』
『実在するのか……』
『誰かサリスの情報知ってる?』
『調べても出てこない』
『裏社会の人間だろうな』
Sランクのスキルなんてまず手に入らない。
どの種類であれ、取得者を目にする機会は極めて稀だろう。
ましてやサリスのテレポートはランク関係なく強い能力である。
その注目度が高いのも無理はなかった。
僕は沸き上がるコメント欄をスルーしてスキル石をサリスに手渡す。
「色々と考察ができそうな展開になってきましたが、今回の配信はこの辺りで終了しましょう。スキル石は優勝者のサリスさんに贈呈しますー」
『おいおい、急すぎないか?』
『まだ終わるな』
『優勝者に質問とかしてよ!!!』
リスナー達が猛烈に抗議しているが、僕は笑って受け流した。
さっきから遠くで怒声と戦闘音が聞こえてくるのだ。
僕は声のボリュームを落として説明する。
「実を言いますと、抗議団体が施設の出入り口を破壊したようです。ちょっと面倒な展開になりそうなので逃げようと思います。あ、二位から十位までの方は残った商品をご自由に取ってくださーい」
『優勝以外は扱い雑で草』
『抗議団体?』
『まあ当然クレームは出るわな』
『大騒ぎだね』
「というわけで本日の配信はここまでです。大会の振り返りは次回の配信で行おうと思います。お疲れ様でしたー!」
コース上に侵入してきた抗議団体が罠に殺されたところで、僕は配信を閉じた。




