第57話 ダンジョン大会を開催してみた⑫
「さて、これにてすべての選手のタイムアタックが終了しました。ランキングを作成中なので少しだけお待ちください」
『お疲れ様~』
『見ごたえがあったな』
『普通に面白かった』
『相変わらずグロかったけどね』
『佐藤キツネだから仕方ない』
スタッフが記録を整理する中、リスナーは自由に話している。
お気に入りの選手や見どころの場面を共有しているようだ。
その分だけ再生数が伸びるので非常にありがたい。
ざっと見たところ、やはり死屍本さんの人気はダントツだった。
配信の流れを変えた点や死霊術を使った頭脳プレイ、あとはシンプルなアイドル力が心を掴んだらしい。
もはや準レギュラーのような頻度だが、今後もこまめに登場してもらおうと思う。
スタッフの合図を受けた僕は、壁の一面を指し示す。
そこにはプロジェクターで十位から二位までのランキング表が投影されていた。
ただしタイムや名前の欄は空白のままである。
「ランキングが完成したようです。こちらにご注目ください!」
僕のセリフに合わせて一斉にタイムと名前が表示された。
死屍本さんは七位で、ボブは惜しくも二位だった。
他にも有力選手が何人もランクインしている。
コメント欄もそれぞれの感想で埋め尽くされていた。
やがて室内の照明が消される。
そしてドラムロールが始まった。
僕がもったいぶった口調で一位の発表に移る。
「皆さんお待ちかねの、大会の優勝者は……」
ドラムロールが止まり、スポットライトが点灯する。
複数のライトに照らされて立つのは、黒スーツを着た白人の男だった。
地味な顔立ちのその男は眩しそうな顔で煙草を吹かしている。
スポットライトで目立っているにも関わらず、その存在感は不自然なほどに薄い。
なんらかの隠密系スキルを使っているようだ。
僕はその男の名を大声で告げた。
「運び屋サリスさんです!」
『……は?』
『誰』
『参加してたっけ』
『知らねえよ』
コメント欄が混乱している。
予想だにしない展開に驚き困惑し、或いは怒っていた。
まさにダークホース……存在すらまともに認識していない選手が優勝したのだから当然だろう。
選手達も怪訝そうな顔をしている者が多い。
僕は炎上にも等しい反応を見せるリスナー達に説明を試みる。
「サリスさんですが、実は大会中にこっそりとクリアしてました。その映像がこちらです」