第55話 ダンジョン大会を開催してみた⑩
死屍本さんがクリアした後も、選手達は次々とタイムアタックに挑む。
頑丈な大剣を持つ戦士は、迫る罠を斬り伏せてゴールに辿り着いた。
背中に大量の矢が刺さっていたが、魔術効果を持つ鎧のおかげでほぼ無傷だった。
物体を浮遊させる魔術師は、空中に足場を作って楽をしようとしたが、不意打ちで発射された弾丸を食らって墜落した。
そのまま小型地雷で頭部を木っ端微塵にされた。
狼に変身するプロ野球選手は、凄まじい瞬発力と機動性を駆使して走り抜けた。
余裕ぶった態度とは裏腹に冷や汗を掻いており、かなり危ない作戦だったのが窺えた。
身軽な動きを得意とする盗賊は、罠の直撃で満身創痍になりながらもゴールしたが、治療前に死んでしまった。
傷口から全身に毒が回ったのが原因だろう。
スキルでバリアを張る軍人は、百メートルのコースを堂々と歩いてゴールした。
完全無欠の防御力は驚異的だったものの、タイムアタックという観点では厳しそうだ。
数々の激戦を経てコースは原形を失っていた。
施設のスタッフが企画後の清掃について愚痴をこぼしている。
これを元通りに戻すのはかなりの重労働だろう。
そこに関して僕は関わらないので、どうか頑張ってほしいと思う。
僕は円滑な進行を意識して司会を務める。
結論から述べると、クリア率は露骨に上がった。
アンデッドが罠を潰して安全ルートを作ったことで、難易度が大きく下がったのだ。
この展開はある程度は予想していたものの、思っていたより派手に壊されてしまった。
せっかく色々と仕込んだので、少し悔しいのが本音である。
まあ、死屍本さんはルールの範疇で突破したので文句はない。
配信の視聴数もしっかり伸びてくれているので、むしろ感謝しているくらいであった。
彼女のクリアが良くない流れを変えてくれたのは間違いない。
(注目の選手はまだ残っている。さらなるドラマを期待できそうだ)
遺品商ボブを筆頭に、高い実力を持つ人間は多い。
コース上に設置した罠も、時間経過で修復したり、自動で追加されるタイプを用意してある。
序盤はグダってしまったが、ここからは上手く盛り上がってくれるだろう。
僕は選手達を一瞥する。
残っているのはちょうど三十人だ。
ほとんどが落ち着き払っており、恐怖や動揺はほとんど見られない。
しっかりと手練れが揃っているようである。