第54話 ダンジョン大会を開催してみた⑨
アンデッド化した選手達は不気味な足取りで突き進む。
負傷をものともしないタフネスにより、たとえ大きなダメージを受けて倒れても平然と立ち上がる。
ある程度の再生力も付与されているらしく、部位欠損から回復したり、他の死体と合体することで行動し続けていた。
たった数体だが粘り強く前進している。
よく見るとコース上に撒き散らされた血液が蛇のように流動し、罠を暴発させていた。
アンデッドが潰し切れなかった罠を作動させて安全なルートを築いているようだ。
血液の蛇は死屍本さんの視線を合わせて動いていた。
彼女は死霊術以外にも魔術を使えるらしい。
『レイちゃんすごい!!!!』
『ネクロマンサーの特性を最大限に活かしてるね』
『世界一のダンジョンアイドル』
『宇宙一の間違いだろ!』
たまに負傷しても、死屍本さんは魔術ですぐに回復する。
罠を潰しながらの前進なので決して速いペースではないものの、確実性は非常に高い。
クリアを優先した堅実な立ち回りは悪くない。
むしろ沈み切った配信の流れを変えてくれたので感謝している。
こうして考えると、死屍本さんはかなり優秀な魔術師だ。
臨機応変なアンデッド運用に加え、血液の蛇で奇襲や補助ができる。
回復魔術で治療することも可能である。
本人のフィジカルも強靭で、最前線で殴り合いができるパワーと度胸を兼ね備えている。
高水準なバランスタイプと言えよう。
(殺し合いで理性を失う癖がなくなれば完璧だけど……)
今回はタイムアタックで戦闘とは違うためか、死屍本さんは冷静なままだ。
しかし、ボルテージが上がると、彼女は狂戦士のような状態に変貌する。
攻撃特化で思考力が低くなり、作戦の幅が大きく狭まるのが弱点であった。
探索者としてさらに強くなるなら、精神面の改善が課題だろう。
そんなことを考えている間に、死屍本さんは無事にゴールへと到達した。
僕はすぐさま彼女のもとに向かって褒め称える。
「おめでとうございます! 初のクリア者となりましたが、どんな心境でしょうか」
「皆さんの応援のおかげで頑張れました! ありがとうございます☆」
『レイちゃんおめでとう!!』
『佐藤以外にクリアできる難易度だったんだな……』
『素直にすごいな』
『ナイス~~』
『ファンになりました。チャンネル登録します!』
リスナーの反応も上々だった。
死屍本さんのチャンネル登録数が急速に増えているらしい。
それは良いことだが、ちゃんと僕のチャンネルも登録してほしいものである。