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第52話 ダンジョン大会を開催してみた⑦

 トラップメンが走る。

 いや、それはもはや歩いていると表現すべきスピードだった。

 不安定なフォームは、腐った肉体では動くのがやっとと言った有様である。

 しかも仲間と繋がれているため、余計にグダグダしていた。

 元からフィジカル面は強くないのもあり、ゴールまで辿り着けないのはこの場の誰もが確信しているだろう。


 ところが、トラップメンの三人は遅々とした動きながらも着実に進んでいた。

 最初はバラバラだった動きも揃い始めて転ばなくなり、おまけに設置型の罠が発動していない。

 不具合ではなく、彼らが意図的に回避しているのだ。


『あれ?意外と進んでる』


『遅いというより慎重』


『感知系スキルで罠を避けてるね』


『グループ名にトラップと付けるだけある』


 リスナーも意外そうに評価している。

 少し期待する声もあった。


 以前までは他人が罠にかかる様を笑う側だった彼らが、現在は使い捨て同然の扱いで罠だらけのコースに放り込まれている。

 計り知れない絶望を感じているはずなのに、トラップメンは忍耐強く進んでいた。

 最期の意地なのだろうか。

 その心理はよく分からないものの、配信の盛り上がりを考えると一生懸命に取り組んでくれるのは大歓迎だった。


 順調だった動きに亀裂が生じたのは、十メートルを越えた辺りだ。

 突如、足元からチェーンソーが飛び出して、最後尾の一人の両足を切断した。

 男は掠れた悲鳴を上げる。


「いぎゃああっ!」


 倒れた拍子にまた別の罠が作動し、噴き上がった炎が男を包み込んだ。

 高熱で肉体が破壊し、男はすぐに動かなくなった。

 いくらアンデッドでも限界はあるのだ。


 他の二人は、死んだ男の腕を破壊して手錠を引き抜く。

 そのまま二人三脚で走り出した。

 大胆すぎる行動は、目の前で仲間が死んだことで冷静さを欠いたのが原因だろう。

 直後、死角に設置されたショットガンがもう一人の頭を粉砕した。


 最後の一人は繋がった死体が重くてその場を動けない。

 どうにか手錠を外そうと躍起になっている。

 苦戦する間に、横殴りに振り抜かれた大鎌が首を綺麗に切断した。

 男は断面から腐った血を漏らしながら崩れ落ちる。


 同時にブザーが鳴り響いてタイム計測の数字がストップした。

 僕はトラップメンの死体を一瞥し、淡々と発言する。


「ゲームオーバーです。記録は約十五メートルですかね。まあ頑張った方でしょう」


『あーあ』


『グロすぎ……』


『やっぱりだめだったかー』


『派手に死んだね』


 死体はそのまま放置しておく。

 これを障害物とするか、何らかの形で利用するかは選手達の自由だ。


「言い忘れましたが、コース内の罠は僕がアレンジしています。全体的に殺傷力が高くなっているので注意してくださいね」


『先に言えよ!!』


『さすがドS』


『商業施設を魔改造しやがった……』


『もう何しても驚かんよね』


 一方、選手達に明確な怯えと後悔が生まれていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! >計り知れない絶望を感じているはずなのに、トラップメンは忍耐強く進んでいた。 >最期の意地なのだろうか。 「素晴らしい忍耐力だ、感動的だな。だが無意味だ」…
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