第51話 ダンジョン大会を開催してみた⑥
あまり説明が長すぎると、リスナーが離れてしまうかもしれない。
そう考えた僕は、さっそくタイムアタックを始めることにした。
選手達を手で指し示しながら元気よく宣言する。
「最初の挑戦者はトラップメンです! 彼らには三人同時に頑張ってもらいます」
よろよろと進み出てきたのは、腐乱した状態のトラップメンだった。
彼らの手はそれぞれ手錠で繋がれており、自由に動けないようになっている。
もっとも、仮に手錠が無かったとしても今の足腰では逃亡も不可能だろう。
『扱い雑で草』
『腐ってるやん』
『臭そう』
『絶対クリアできないだろ』
リスナー達もトラップメンには期待していないようだ。
他の選手達も顔を引きつらせている。
「迷惑系ライバーのトラップメンは、アンデッド化してボランティア活動に従事していました。今回は僕から依頼して参加いただいた形です」
『物は言いようだよな~』
『ボランティア……?』
『奴隷の間違いだろ』
『経緯を知らない人は過去配信を見た方がいいよ』
『鬼畜佐藤』
コメント欄のツッコミは一旦スルーしておく。
トラップメンにスマホを向けると、彼らは泣き言を言っていた。
「誰か死なせてくれ……」
「もう、痛いのは嫌だ」
「ははは……はははははははは」
三人とも半ば精神崩壊を起こしている。
死霊術の限界が近く、肉体が崩壊寸前なのだ。
脳も腐りかけているせいで思考が上手く回っていないのだと思う。
それでも僕は容赦しない。
気にせず配信を進めていく。
「それでは始めてもらいましょう! お願いします!」
僕のコールを聞いたトラップメンは躊躇して動きを止める。
しかし結局は逃げられないと悟ったのか、観念したようにボタンを押した。
そしてコース内へと踏み込む。
『がんばれ~』
『どこまで行けるかな』
『あわれだ』
『こいつらは自業自得』
トラップメンの動きはかなり鈍い。
三人の連携が取れておらず、スタート地点で転倒していた。
文字通り足を引っ張り合っている。
「コースには数十台のカメラを設置してあり、選手を映す映像が自動で配信画面に表示されます。どんなシーンも撮り逃がしませんのでご安心を」
最初にトラップメンを投入したのは、ある種のデモンストレーションである。
僕は無傷でクリアしたので、彼らには派手な死に様を見せてほしいものだ。