第50話 ダンジョン大会を開催してみた⑤
「最後に賞品の説明をします。こっちに運んできてくださーい」
僕が合図をすると、スタッフがキャスター付きのテーブルを押して現れた。
テーブルには様々なアイテムが載せられている。
『例のスキル石か』
『何の能力なんだろう』
『レアなのは確定だろうけど』
『まとめサイトで予想されてたよな』
スキルの予想記事は僕もいくつか目を通した。
だいたいがレアスキルを予想していた。
ここでリスナーを騙してしょぼいものにするわけがないという推測である。
無論、その考えは当たっている。
僕はアイテムを映しながら説明する。
「今回はタイムアタックの上位十人までに賞品があります。速かった選手から順に取っていくスタイルですね」
『優勝以外も貰えるのか!』
『めっちゃ豪華』
『魔術武器もあるね』
『太っ腹すぎ』
上位十人なら選手のモチベーションも上がるだろう。
誰かがダントツで速かったとしても、とりあえず賞品を手にする可能性はあるわけだ。
追加の出費はそれなりに痛かったものの、演出のためだと割り切っている。
僕はスキル石をそっと持ち上げる。
照明の光を反射する輝きは澄んでおり、一方で内包するパワーを示すかのように内部が発光していた。
「そして皆さんが気になっているスキル石の効果を発表しようと思います」
『おお!!』
『ついに来た!!!』
『なんだなんだ』
『ワクワク』
僕はスキル石を大きく掲げる。
選手達も固唾を呑んで注目していた。
その中で堂々と発表する。
「こちらは【超人化A】のスキル石です!」
『あっ』
『うわっ』
『えええええええええええ』
『超人化!?!?』
『やばいやばい』
『拡散しよう』
コメント欄の動きが爆発的に速くなった。
あまりの勢いに画面が追い付いておらず、内容をちゃんと読めない。
とにかくリスナーが興奮しているのは間違いなかった。
『超人化って何? 誰か解説たのむ』
『身体強化系スキルの最強格』
『色んな高倍率バフが常にかかる』
『Dランクで筋力三倍、魔力量四倍、二割ダメージカット、自動回復が付く』
『チートで草』
『じゃあAランクならもっと強いな』
『一体いくらで買ったんだ?』
奮発した甲斐もあり、期待外れとはならなかったらしい。
選手達も騒然としている。
それだけ強力なスキルなのだ。
ボブの店で見つけた時に購入を即決したのも当然だろう。
僕はここで選手達に問いかける。
「優勝者にはこのスキル石を贈呈します。どうでしょう、やる気は出ましたか?」
選手達は雄叫びで応えた。