第49話 ダンジョン大会を開催してみた④
百人分の意気込みが聞けたところで、僕は次の話に移った。
「続いてはコース説明です。実際に僕が試走する形で説明していきますね」
『いいね』
『お手並み拝見だな』
『問題ないだろ』
僕はスタート地点まで歩いていく。
そこにはボタン付きの台座が設置されており、これを押すとタイムが計測されるのだ。
肝心のコースは横幅二十メートル、長さは百メートルくらいのスペースである。
大量のギミックがそこかしこに施されているので、スタートからはゴール地点がほとんど視認できない。
ただ一直線に進むのではなく、二十メートルの幅で最適なルートを探りながら突破しなければならなかった。
「大会では最難関の超上級者コースを使用します。ダンジョン攻略のノウハウが無ければクリアできない設計になっています。気になる方はぜひ概要欄のリンクから詳細を確認してみてくださいね」
『宣伝おつ』
『露骨に挟んでくるなあ』
『いくら貰ってるんだろう』
別にバレバレでもいい。
配信後に宣伝費を貰えれば僕の勝ちである。
そう開き直りつつ、スタート地点のボタンを手のひらで押し込んだ。
壁にあるデジタル数字がカウントを始めたのを確かめて、僕は手足を回してほぐす。
「さあ、ちゃちゃっとクリアしましょうか」
今回はコース紹介なので全力で行く必要はない。
ほどほどのスピードを意識して、画面的な見やすさを重視する。
超上級者コースは、室内アスレチックを何十倍にもハードにしたものだった。
ぶら下がっている疑似植物のせいで視界が狭く、足元にも雑草で覆われている。
その中に理不尽な罠が紛れ込み、時には魔物を模した器具が攻撃を仕掛けてくるのだ。
気を抜くと一瞬で吹っ飛ばされかねない。
その名に恥じない難易度であった。
もっとも、僕が苦戦する程度ではない。
三十秒もかけずに走破して、僕はゴール地点のボタンを押した。
「まあこんな感じですね」
『お見事』
『さすがだなあ』
『不死身でゴリ押しすると思ったのに』
『佐藤って普通に強いよね』
リスナーから称賛の嵐が巻き起こる。
投げ銭もたくさん飛んできたのでお礼を言っておいた。
「参加者の皆さんには、ここまでのタイムを競っていただきます。ちなみに安全装置は解除してもらってるので怪我は自己責任です。普通に死ぬので気を付けてくださいねー」
『さりげに鬼畜で草』
『相変わらずヤバい奴だ』
『ようやく佐藤キツネっぽくなってきた』
『健全な大会ではないと思ってた』
『参加しなくてよかった……』
リスナー達が喜んだり怯えている。
配信なのだから多少のリスクはあった方が盛り上がるだろう。