第47話 ダンジョン大会を開催してみた②
会場に到着した僕は三脚付きスマホで配信を開始した。
いつもの格好で手を振って挨拶をする。
「皆さん、こんにちはー。佐藤キツネです。本日は事前告知していた大会の模様を配信していこうと思います」
『待ってた!!!!』
『ようやくこの日が来たか』
『誰が登場するか楽しみ』
『レイちゃんはまだか』
コメント欄はさっそくボルテージが上がっている。
焦らしに焦らした甲斐があったというものだ。
痺れを切らしたリスナー達は、興奮を抑え切れない様子で配信に食い付いていた。
僕はスマホを持って周囲を映す。
広大な室内は、いくつかのエリアに分かれてアスレチックのような設備が配置されている。
それらをしっかりスマホで捉えながら説明する。
「今回は大会のために施設を貸し切っております! スポンサーは株式会社ダンジョンマックスさんです」
『へえ、大手じゃん』
『早くも企業案件かよ』
『マジですげえな」
『貸し切りとか豪華すぎ』
だいたい撮れたところでスマホを床に設置する。
僕はポケットに入れていたメモを取り出すと、そこに記載された内容を読み始めた。
「この施設は天然のダンジョンを改造したもので、安全面に配慮して運営されています。テーマパークとして遊ぶこともできますが、ダンジョン攻略の練習にも最適ですね。もちろんレベルやスキルの補正も問題なく働きます。年間パスを買えば割安で利用できますので、皆さんもぜひお越しくださいね。この配信の概要欄に公式サイトとクーポンのリンクを貼っておきます」
『露骨な宣伝』
『棒読みすぎて面白い』
『せめてカンペを隠す努力をしろ』
『担当者、頭抱えてそう』
『でもこの施設は普通に気になるな』
僕の対応にリスナー達が呆れている。
まあ、仮に真面目に宣伝したところで宣伝なのは丸分かりだ。
いっそこれくらい開き直った方がウケると思う。
「この配信で大会について知った方もいると思うので、改めて説明していこうと思います」
僕は施設内を歩きながら概要を話していく。
スマホの画角に入らないようにして、施設のスタッフが慌ただしく動き回っていた。
「大会の競技はタイムアタックです。この施設の最難関コースを何分でクリアできるか競っていただきます! そして優勝者には、僕が購入したスキル石を贈呈します!」
『うおおおおおおおおおお!!!』
『タイムアタックなのか』
『スピードタイプのスキルが有利だな』
『出場すればよかった……』
『お前が出ても無理だよ』
参加者同士が戦う大会も考えたのだが、ダンジョンらしさを求めるなら今回の形式が良いだろう。
タイムアタックはダンジョン攻略でも人気のジャンルだ。
効率性をひたすら極めた攻略動画はサイト内でもたくさん再生されている。
大会の盛り上がりという観点でも十分なコンテンツと言えよう。