第44話 遺品商にインタビューしてみた⑤
熱狂するコメント欄を見せると、ボブはますます張り切る。
彼は得意げな顔で店の奥へと歩き出した。
「よーし! 今日は特別なアイテムも紹介しよう! 驚いて目玉が飛び出るぜ?」
『特別なアイテム?』
『なんだろう』
『気になる』
『目玉を拾う準備できた』
案内されたのは、一番奥の部屋だった。
壁を埋め尽くすように木製の棚が設置されて、色とりどりの石が陳列されている。
ボブはそれらを指し示してリスナー達に問う。
「こいつは何だと思う?」
『宝石?』
『魔力の結晶とか』
『もっとレアなやつでしょ』
『竜の涙かも』
リスナーは次々と予想を答える。
ボブは面白そうにその様子を眺めつつ、頃合いを見て話を続けた。
「正解は物質化したスキルだ! こいつを砕くと対応したスキルが手に入るぜ!」
『なんだってーーーー!?』
『スキル石か!!』
『実在したんだ』
『そりゃ目玉も飛び出るわ』
『でもお高いんでしょう?』
値段に触れたコメントを見て、ボブは棚の石を順に見ていく。
僕はスマホを近づけて値札を画面に映した。
先ほどのブルーシートに並んでいたものより明らかに桁が多かった。
ボブは値札を指差しながら説明する。
「安いスキルで百万くらいだな! 高いと余裕で億って感じだ」
『普通に高かった』
『そりゃそうだ』
『ですよね~』
『庶民の手じゃ届かない……』
手軽に任意のスキルを取得できるのだから妥当な値段だろう。
スキル石はとてつもなく貴重なのだ。
一般人が手に入れられる機会なんてまずない。
僕は別に必要ないが、スキル石が喉から手が出るほど欲しい者だっているはずだ。
これで強力なスキルを取得できれば、探索者としての人生が一変する。
上手くやったらスキル石の代金くらいは余裕で稼げるに違いない。
ひとしきりコメントが盛り上がったところで、僕はボブに質問する。
『こんなにたくさんのスキル石、どうやって調達してるんだ? さすがに遺品じゃ説明つかないだろ』
「あ、質問が来てますよ。物質化したスキルの集め方が気になるそうです」
「ふむ。仕方ねえな。それもサービスで教えてやるよ」
ボブがその場で動きを止める。
それからドヤ顔でスマホに向かって叫んだ。
「俺は死体のスキルを物質にできる! まあつまり特殊な遺品ってわけだな! どうだ、驚いたかっ!」