第43話 遺品商にインタビューしてみた④
僕は店内の様子をゆっくりと撮る。
リスナーの中でもコレクターや探索者らしき人間のテンションが大きく上がっていた。
『宝の山だな』
『すげー』
『これ全部遺品なの?』
『ネット販売してくれー!』
見る者が見れば、これがどれだけすごい光景か理解できる。
ここにあるアイテムだけで大半のダンジョンを攻略できるだろう。
品質の高さは専門店にすら劣らない水準である。
僕は引き続きボブに質問を投げる。
「商品はどうやって仕入れているのですか?」
「そりゃもちろんダンジョン内の死体から貰ってるぜ。俺は遺品商だからな! 商品調達のために営業時間の半分は探索に使ってるくらいだ」
『単独探索かよ』
『やっぱりすごいなボブ』
『命知らずというか……』
『強すぎる。引退詐欺だろ』
リスナー達の驚きやツッコミは当然のものである。
基本的にダンジョン探索は一人でやるものじゃない。
複数人でパーティを組み、互いの欠点を補いながら協力して進むのがセオリーだ。
ボブのように単独でアイテムを漁るのは自殺行為に等しい。
そういう欲深さで死ぬ探索者は星の数ほどいる。
(まあ、ソロで配信してる僕が言える立場ではないけれど)
配信をしながらダンジョン攻略なんて、無謀な行為の最たる例だろう。
自分のことを棚に上げて、僕はボブに話しかける。
「おすすめの商品をいくつか見せてほしいです」
「おう、任せとけ! 紹介したいのがあるんだ」
ボブはブルーシートの上から血みどろの大斧を掴み取った。
それを顔の横で保持して説明する。
「まずはこいつだ! 所有者の魔力を吸って破壊力を高める効果がある。シンプルに使いやすくて頑丈だぜ!」
『使い勝手の良い魔術武器だ』
『めっちゃ欲しい』
『誰か買ってきてー』
『ボブ、遺品でいいからせめて洗ってくれ』
次にボブは半透明の盾を持ち上げてみせた。
盾の表面は虹色の紋様が流動している。
「これもオススメだな。受けたダメージを倍にして返すことができる。ただし魔術は反射できないから注意してくれ!」
『やば!』
『レア効果やん』
『ほしいほしいほしいほしいほしい』
『物理攻撃限定でも十分チート』
『品揃えが神ってる』
リスナーの盛り上がりが最高潮だ。
商品をアピールしてもらったのは正解だったようだ。