第41話 遺品商にインタビューしてみた②
コメント欄が騒がしい。
リスナーのリクエストに応えるという点が良かったみたいだ。
このタイミングで新たな要望を挙げている者もいる。
内容次第では検討してもいいかもしれない。
「今からインタビューする商人はダンジョンに店を持っています。外での販売はせず、そのダンジョンを突破してきた探索者にしか商品を売らないそうです。ご存じの方もいらっしゃるのでは?」
『あ、誰かわかった』
『マジか。あの人に取材するの』
『早く答え教えて』
僕は自分の背後をスマホで映した。
そこには石造りの簡素な建物があった。
入り口の上部には様々な言語で書かれた看板が掲げられている。
日本語の部分は角ばった字で「遺品商ボブのお店」と記されていた。
「今回の取材対象は遺品商ボブです! ちなみに僕は彼の店の前にいます。課題のダンジョンは既に突破してきました。攻略動画は配信後に投稿するので、そちらもぜひ観てくださいね」
『おお、準備がいいな』
『さすが佐藤』
『有能』
『攻略動画気になる』
配信以外も視聴してもらうことで収益を増やす作戦だったが、リスナーの反応は上々と言えよう。
続けて宣伝しようとしたところで、店の奥から呆れたような声がした。
「おいおい、前置きが長いな。早く紹介してくれよ!」
「ああ、すまないね。じゃあこっちへどうぞ」
苦笑した僕は手招きする。
店から現れたのは、スキンヘッドの大柄な黒人の男だった。
彼は元気よく挨拶をする。
「ようお前ら! 俺が世界一の商人ボブだ! 迷宮攻略に役立つアイテムはなんでも売ってるぜ!」
『明るいなボブ』
『見た目が強そう』
『商人ってか探索者じゃね?』
『元特殊部隊でも驚かない』
コメントが面白い。
ボブの容姿を知らなかった人間は意外そうにしていた。
商人は非戦闘員が多いため、そのイメージとボブはかけ離れている。
「ボブは僕の知人なんです。今回、インタビューを打診したら快く引き受けてくれました」
「本当は面倒だったんだがな! あんな額の報酬を見たら頷くのも仕方ねえってもんだ」
『こころ……よく……?』
『金の力じゃん』
『これが大人の世界……』
『まあ配信のために金を使ってくれるのはありがたいよな』
『そうそう、面白い企画になるならオッケー』
結構な出費になってしまったが、今回の配信でまた稼げばいい。
遺品商ボブはメディア露出が極端に少ないことで有名だ。
そんな彼のインタビューとなれば食いつく者も多いだろう。