第4話 闇バイトをぶっ潰してみた④
死体からナイフを奪ったところで、僕はステータスの変化に気付く。
視界に展開されたゲーム仕様のウィンドウを見て微笑んだ。
「おや、レベルが上がったみたいです」
『おめでとう!』
『いいじゃん』
『ナイス〜』
コメント欄の祝福を受けていると、リスナーの一人が質問を飛ばしてきた。
『佐藤さんはレベルいくつ? そこそこ高そうだけど』
「僕ですか? 今はレベル31ですね。趣味や仕事で潜ることがあって、気付いたら上がってました」
質問に答えた途端、またもやコメント欄が加速した。
リスナー達は僕の新たな情報に驚いている。
『31!?』
『え、すごくね?』
『探索者の平均レベルっていくつだっけ』
『確か15とかでしょ。ベテランでも25だって』
『ベテラン負けてて草』
ダンジョンでレベルを上げるのは大変だ。
魔物を倒して規定の経験値をためないといけない。
レベルアップするとそれまでの行動に合ったスキルを取得し、身体能力が上がるが、レベルが高くなるほど必要な経験値も増えていく。
レベル20を超えれば専業でもやっていけるため、一般的な探索者はそれ以上のレベルアップを諦めて難度の低いダンジョンで稼ぐようになる。
無茶な冒険をするより、堅実に儲けるのが賢いと悟るわけだ。
ほどほどの収入で満足できるのなら、平均レベル帯の探索者でチームを組めば事足りるのが実情であった。
『佐藤さんのスキル構成知りたいな』
『気になる』
『でも個人情報でしょ。教えてくれるかね』
「一部でいいならスキルくらい紹介しますよ。知られて困るものでもないですし」
話し出そうとした直後、ダンジョンの奥から三人の男が姿を見せた。
それぞれロングソード、散弾銃、鉈を持っている。
これまで殺した者達と異なり、戦い慣れた雰囲気がある。
彼らよりレベルが高く、武器に応じたスキルを取得しているのだろう。
男達は殺気を剥き出しにして迫ってくる。
「あいつが侵入者か!」
「一人で来るなんてふざけた野郎だ!」
「油断するな。連携してぶっ殺すぞ」
僕はひとまず三脚付きのスマホをその場に置いた。
角度を調節して今からの戦闘シーンが映るようにする。
せっかくの見せ場が撮れないのはもったいない。
閲覧数を増やすためにも、ここでバシッと成功させておきたかった。
僕は右手にナイフ、左手に金鎚を持って微笑む。
「彼らを使ってスキルを見せましょうか」