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第35話 迷惑系ライバーを成敗してみた④

 僕は小走りで死屍本さんを追いかける。

 しかし、手足の痺れとふらつきのせいで、思うように進むことができない。

 加えて数歩ごとに吐血してしまい、目の焦点も合っていなかった。


 いずれも体内に回った毒の症状である。

 強引な罠の突破により、致死量の数十倍の毒を受ける羽目になった。

 もっとも、僕はこれくらいでは死なない。

 一時的に支障は出るものの、再生で治るまでの我慢だ。


 ジョギングくらいの速度で移動すること暫し。

 ようやく死屍本さんに追い付いた時、彼女は釘バットでトラップメンの男を滅多打ちにしていた。

 肉が破裂するような連打音がはっきりと鳴り響いている。

 ただし、クリーンヒットはしていない。

 わざと急所を外して長く苦しめているのだ。


 男は丸まって無抵抗で殴られていた。

 釘バットで皮膚が裂けて血だらけになっている。

 見るからに満身創痍だが、戦意は喪失していない様子だった。

 プロラスマスクの奥にある目には殺気が宿っている。


(暗殺系のスキルか)


 予測と同時に僕はナイフを投擲する。

 ナイフは男の首に突き刺さった。

 びっくりした顔になった男の口から何かが落ちる。

 それは小さな針だった。

 口内に隠していたそれを吹いて死屍本さんに当てるつもりだったのだろう。

 彼女が完全に油断するまで耐えていたわけだ。


 僕は死屍本さんを押し退けると、男のプロレスマスクを掴んで剥がす。

 血と痣だらけの顔は元の人相が分からない状態であった。

 僕は落ちたばかりの針を拾い、見開かれた眼球に突き刺す。

 次の瞬間、男は甲高い悲鳴を上げた。


「ああああああああアアアアアアアアァァッッ!?」


 男は目を押さえてのたうち回る。

 僕はその腹を踏み付けて力を込めていく。


「アイドルに毒なんて使ったらダメですよ。もっと優しくしましょう」


『そーだそーだ』


『佐藤に同意』


『たまには良いこと言うね』


『見直したぞ佐藤キツネ』 


 男はしばらく苦悶していたが、やがて動きを止める。

 目を開けたまま呼吸が止まっていた。

 毒がしっかり回ったのだろう。

 口に含むための工夫はしていたようだが、自分の眼球に刺されることは想定していなかったらしい。

 僕は死体から足をどけて持ち物を漁る。


「さて、トラップメンはあと一人ですね。さっさと片付けますか」


 罠の材料や道具を拝借してスポーツバッグに詰める。

 こういうアイテムはオークションに出すと高く売れるのだ。

 収益化が通ったとは言え、臨時収入を見逃す手はない。

 稼ぎを増やしつつ、ネットに蔓延るコレクターを喜ばせていこうと思う。

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