第33話 迷惑系ライバーを成敗してみた②
歩いている間もコメントはどんどん投稿されていく。
そこには有益な情報がたくさんあった。
『トラップメンは暗殺系のスキルを持ってるから注意して』
『不意打ちで威力が倍増する』
『魔物を操るスキルも持ってるらしい』
『罠も普通に厄介だよね』
『卑怯な奴らだけど、その気になれば戦える集団』
コメントの一部は、トラップメンの視聴者から寄せられているようだ。
ただし、ファンではないらしい。
それどころか僕達に加担して、彼らを破滅へと導こうとしている。
トラップメンを恨んでいるというより、単純に面白がっているのだと思う。
ちなみに暗殺系スキルとは、文字通り暗殺に特化した能力のことだ。
僕もいくつか持っているので使用感は知っている。
個人的な意見を述べるなら、通常戦闘ではほぼ使えず、限定的な状況で効果を発揮する傾向にある。
発動条件が厳しい代わりにダメージ倍率が高いのだ。
そのため複数の暗殺系スキル持ちの攻撃は、時に信じられない威力を叩き出す。
武器や腕力が貧弱でも関係なく、各種補正で補強してくるのが厄介であった。
防御を無視するタイプのスキルもあり、油断ならないのは間違いない。
トラップメンはそういった系統のスキルを揃えているらしい。
配信の方向性も加味して、自衛用の能力を構築しているのだろう。
僕は気にしないが、戦闘中は無防備すぎる死屍本さんは守らないと危ない。
リスナーからも脅されているので、普段より意識を張るつもりだ。
「皆さん、色々と情報をありがとうございます。とても助かります」
「さっすが信者さんです★」
死屍本さんも上機嫌だった。
先ほどから涎を垂らして釘バットと鎖を振り回している。
近付くと巻き込まれそうなので少し距離を取って歩かねばならないほどだ。
おそらく狂戦士系のスキルを持っているのではないか。
そうじゃないと説明が付かない様子である。
獰猛な死屍本さんの様子に苦笑していると、トラップメンの二人目を発見した。
プロレスマスクを被る細身の男は、仁王立ちで僕達を待ち構えている。
残る一人の気配はこの先を走っていた。
プロレスマスクの男は、僕達を見て露骨に渋い表情になる。
「うわ、あいつやられたのか……もしかして殺したの?」
「ええ、しっかりきっちり死んでもらいましたよ」
僕はニコニコと笑って応じる。
男はあまり動じていない。
ライバー活動をやるだけあってそれなりの胆力を持ち合わせているようだ。
片手にナイフを握った僕は淡々と語る。
「法律上、他の探索者に繰り返し攻撃した人間は魔物と見なしてよいそうです。倫理的に明言できないだけで、ダンジョン内での殺人を容認しているわけですね。まあ、そんなの関係なく無法地帯になっているのが実情ですが」
「何が言いたいんだよ」
「いえ、別に。あなたを惨殺するのに躊躇う理由はないと伝えたかっただけです。ほら、リスナーの方々も期待してますよ」
『早くぶっ殺せー』
『死亡確定』
『何秒耐えるか賭けようぜ』
リスナー達は、既に男の運命を悟っていた。