第26話 人気ライバーとコラボ配信してみた⑤
それからほどなくして質問コーナーが始まった。
僕がダンジョン内を先導し、死屍本さんがコメントを読み上げていく。
「本名は?」
「秘密ですねえ。佐藤もキツネも関係ないのは確かです」
横穴からゴブリンが顔を出した。
叫ばれる前にナイフを突き刺して黙らせる。
「年齢は?」
「たぶん二十代ですよ、ええ」
床のスイッチを踏んだことで、死角から矢が放たれた。
太腿に刺さったそれを引き抜いて捨てる。
毒も塗られていないので特に問題ない。
「仕事は?」
「今は配信活動しかしてませんよ。前職も似たようなことをしてました」
過去を振り返りながら、行く手を阻む魔物を切り裂いていく。
僕が前衛を担当しているため、死屍本さんまで被害は届かない。
この前のヤクザに比べれば、あくびが出るほど優しい相手だ。
破損した武器は遠慮なく捨てて、時には魔物の武器を奪い取っていく。
「好きな食べ物は?」
「肉と刺身が好物ですかね。でも基本的になんでも食べます」
ダンジョン内で飢えた時なんかは魔物の肉でも食べたりする。
酷い味でも栄養にはなるのだ。
「今後、どんな企画をするつもり?」
「リスナーの皆さんからの要望もありますし、色々やっていきますよ。犯罪者を殺すのは人気っぽいので、とりあえず続ける予定ですかね」
答えながら金属バットを振り回し、迫るゴブリンの顔面を殴り飛ばす。
頭蓋が弾けたゴブリンは白目を剥いて崩れ落ちた。
「持ってるスキルを教えて」
「いっぱいあるので説明し切れませんね。これからの配信で披露しようと思います」
銃身を切り詰めたショットガンを連射する。
盾を構えるゴブリンは蜂の巣になって絶命した。
「なんで狐面?」
「キャラ付けです。ライバーになるなら、こういう特徴が必要かと思いまして」
銃剣でゴブリンの喉を突き刺し、そのまま壁に叩きつけた。
迸った返り血が僕の顔を濡らす。
「腕はもう治ったの?」
「しっかり生えてますよー。絶好調です」
僕は腕を回してみせる。
魔獣に噛み千切られた部分はしっかり生えて回復している。
「死屍本レイについてどう思う?」
「素敵な方ですね。こうして堂々と売名させてくれますし」
「もう! そこは可愛いとか嫁にしたいとか言ってほしかったな☆」
死屍本さんがぽこぽこと背中を叩いてくる。
その様子にコメント欄の勢いが加速した。
『イチャイチャしやがって』
『佐藤だけ爆発しろ』
『炎上させてやろうかな』
『もう十分に燃えてるだろ』
嫉妬と憎悪にまみれたコメントを見て、僕は苦笑するしかなかった。