第25話 人気ライバーとコラボ配信してみた④
入り口を抜けた先には、石造りの噴水広場があった。
水は枯れているが、周囲にはたくさんの探索者達がいる。
ここはまだ魔物が出現しないエリアなので、待ち合わせにちょうどいいのだ。
探索で手に入れたアイテムを交換する者もおり、外にも劣らないほどにぎわっていた。
「さあ、どんどん進んでいきますよー☆」
死屍本さんは元気よく突き進んでいく。
彼女に気付いた探索者達は慌てて道を開けたり、スマホで写真や動画を撮り始めた。
中には握手を試みようとする者もいたが、僕を見た途端に断念する。
やはり反応の差が激しい。
別に落ち込んだりはしないものの、どうしても目には留まってしまう。
噴水広場を抜けた死屍本さんは、いくつかある通路のうち下り坂のルートを選ぶ。
その動きに迷いは感じられない。
ダンジョンアイドルを自称するだけあって、内部構造は把握しているようだ。
最近はインターネットで検索すれば、有名なダンジョンの地図を手軽にダウンロードできる。
事前にリサーチしておくことで、攻略難度を大幅に下げられるのだ。
特にこのダンジョンは出現する魔物も弱く、罠もそこまで悪質ではない。
それでも油断して死ぬ探索者もいるが、基本的に単独でなければ対処は容易だった。
しばらく雑談しながら歩いていると、前方から緑色の小鬼が現れた。
手には棍棒、衣服は腰巻だけという原始人スタイルだ。
死屍本さんはオーバーリアクションで指差して声を上げる。
「あっ、ゴブリンが出てきました☆」
『危ない!』
『レイちゃん逃げて!』
『佐藤早く倒せ!』
ゴブリンがいきなり殴りかかってきた。
しかし、スピード自体は遅い。
僕は持ってきたスポーツバッグを振りかぶり、そのままゴブリンの顔面に叩きつけた。
吹っ飛んだゴブリンは壁に頭をぶつけて悶絶する。
隙だらけなその手から棍棒を奪い取り、力を込めて殴る。
最初は四肢を痙攣させていたゴブリンだが、そのうちぐったりとして反応を返さなくなった。
頭が割れて絶命したゴブリンを見て、僕は棍棒を投げ捨てる。
すぐさま死屍本さんが駆け寄ってきた。
彼女は僕の腕に縋りついてくる。
「ありがとうございますー! こわかったですー☆」
「いえいえ、これくらい楽勝ですのでお気になさらず」
『本当に楽勝なんだよな……』
『魔獣を殺しまくる奴が何か言ってる』
『ゴブリンに同情する』
『レイちゃんから離れろ!』
距離感のせいか、リスナー達からブーイングが発生していた。
異性との配信はこういう面倒な部分があるらしい。
僕は早くもその一端を思い知ったのであった。