表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/134

第25話 人気ライバーとコラボ配信してみた④

 入り口を抜けた先には、石造りの噴水広場があった。

 水は枯れているが、周囲にはたくさんの探索者達がいる。

 ここはまだ魔物が出現しないエリアなので、待ち合わせにちょうどいいのだ。

 探索で手に入れたアイテムを交換する者もおり、外にも劣らないほどにぎわっていた。


「さあ、どんどん進んでいきますよー☆」


 死屍本さんは元気よく突き進んでいく。

 彼女に気付いた探索者達は慌てて道を開けたり、スマホで写真や動画を撮り始めた。

 中には握手を試みようとする者もいたが、僕を見た途端に断念する。

 やはり反応の差が激しい。

 別に落ち込んだりはしないものの、どうしても目には留まってしまう。


 噴水広場を抜けた死屍本さんは、いくつかある通路のうち下り坂のルートを選ぶ。

 その動きに迷いは感じられない。

 ダンジョンアイドルを自称するだけあって、内部構造は把握しているようだ。


 最近はインターネットで検索すれば、有名なダンジョンの地図を手軽にダウンロードできる。

 事前にリサーチしておくことで、攻略難度を大幅に下げられるのだ。

 特にこのダンジョンは出現する魔物も弱く、罠もそこまで悪質ではない。

 それでも油断して死ぬ探索者もいるが、基本的に単独でなければ対処は容易だった。


 しばらく雑談しながら歩いていると、前方から緑色の小鬼が現れた。

 手には棍棒、衣服は腰巻だけという原始人スタイルだ。

 死屍本さんはオーバーリアクションで指差して声を上げる。


「あっ、ゴブリンが出てきました☆」


『危ない!』


『レイちゃん逃げて!』


『佐藤早く倒せ!』


 ゴブリンがいきなり殴りかかってきた。

 しかし、スピード自体は遅い。

 僕は持ってきたスポーツバッグを振りかぶり、そのままゴブリンの顔面に叩きつけた。


 吹っ飛んだゴブリンは壁に頭をぶつけて悶絶する。

 隙だらけなその手から棍棒を奪い取り、力を込めて殴る。

 最初は四肢を痙攣させていたゴブリンだが、そのうちぐったりとして反応を返さなくなった。

 頭が割れて絶命したゴブリンを見て、僕は棍棒を投げ捨てる。


 すぐさま死屍本さんが駆け寄ってきた。

 彼女は僕の腕に縋りついてくる。


「ありがとうございますー! こわかったですー☆」


「いえいえ、これくらい楽勝ですのでお気になさらず」


『本当に楽勝なんだよな……』


『魔獣を殺しまくる奴が何か言ってる』


『ゴブリンに同情する』


『レイちゃんから離れろ!』


 距離感のせいか、リスナー達からブーイングが発生していた。

 異性との配信はこういう面倒な部分があるらしい。

 僕は早くもその一端を思い知ったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ