第24話 人気ライバーとコラボ配信してみた③
僕達の配信に気付いた周囲の探索者が、チラチラとこちらの様子を窺ってくる。
視線の大半は死屍本さんに注目しているようだった。
耳を澄ますと会話が聞こえてくる。
「おい、死屍本レイだ」
「すげえな……実物も美人じゃん」
「サイン貰ってこようかな!」
一方で僕に言及する声もちゃんとあった。
ただし、死屍本さんと違って怯えや困惑が大いに含まれている。
「あれって佐藤キツネじゃね?」
「誰だよ」
「ヤクザを殺しまくったヤバい配信者」
「動画が拡散されてた奴か」
「なあ、逃げた方がいいんじゃないかな……」
そそくさと退散する者までいる始末だった。
配信を知る者にとって、僕は近寄りたくない存在らしい。
まあ真っ当なリアクションである。
死屍本さんは上目遣いになって話しかけてくる。
「すごい注目されてますね、佐藤さん! たった二回の配信でこれだけの知名度なんてさすがです☆」
「いやいや、死屍本さんには負けますよ」
実際、知名度については比較するまでもない。
死屍本さんはライバーとして何年も活動している。
テレビや雑誌にも登場するほどで、歌手やモデルの方面でも人気なのだ。
ぽっと出の僕がこうしてコラボしているのが奇跡である。
露店の間を進みながら、死屍本さんは僕に質問をする。
「これからダンジョンの挑戦しますが、何か補充しなくて大丈夫ですか? 一応、弱くても魔物は出てきますよ☆」
「平気ですよ。最低限の準備はしてますから」
そう言って僕は持参したスポーツバッグの中身を見せる。
バッグには無骨な工具から銃火器まで、様々な武器が詰め込まれている。
これだけあれば戦闘で困ることはないだろう。
『前の日本刀はどうしたの?』
「魔術武器はオークションで売りましたよ。相場以上の価格になったので大満足です」
『えー、もったいない!』
『日本刀かっこよかったのに』
『絶対に後悔するよ』
リスナー達は不満そうだった。
生憎と僕は一つの武器を愛用するタイプじゃない。
価値の高い武器はさっさと売り払って儲けにしたいのだ。
死屍本さんもなぜか残念そうな顔でアピールをする。
「私も佐藤さんが刀を使うところ見たかったですー☆」
「そんなに面白いものじゃないですよ。ちゃんと武術を修めた人の方が美しいです」
話しているうちにダンジョンの入り口に到着した。
付近にいた探索者達は一斉に動いて道を開ける。
これは死屍本さんと僕の相乗効果か。
そういった周囲の反応も気にせず、死屍本さんは元気に配信を仕切る。
「ではいよいよダンジョンに潜りまーす! チャンネル登録がまだの方はこの機会にぜひ☆」
『もちろん登録してる』
『月額会員にもなってるよ』
『俺はゴールド会員』
『おれなんてプラチナ会員だから』
『今日だけで三万円スパチャしてる』
だいぶコアなファンが多いらしい。
リスナーの懐を心配しつつ、僕はダンジョン内部へと足を踏み入れた。