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第22話 人気ライバーとコラボ配信してみた①

 とあるダンジョンの入り口付近。

 簡素な休憩所が設けられたそこで、僕は瓶コーラを飲んでいた。

 隣で自撮り棒を使ってスマホを構えるのは、パステルカラーの衣装を着た若い女だ。

 髪は銀と黒を混ぜたロングで、指はやけに凝ったネイルで飾っている。

 彼女は配信を開始すると、甘ったるい声とポージングで挨拶をする。


「全宇宙の信者さーん! こーんにちはーっ! 超絶怒涛のダンジョンアイドルこと死屍本レイでーす☆」


『いえーい』


『レイちゃーん!!!!!』


『待ってた!』


『うおおおおおおおおおおおお』


『今日も最強に美人』


『顔良すぎ』


 さっそくコメント欄が沸き上がる。

 とてつもない視聴者数だ。

 僕の配信でも比較にならない人気である。

 画角的に僕はまだ映っておらず、死屍本さんだけでオープニングトークを進めている。

 上手く場を盛り上げるテクニックは、素人目にも見習う部分がたくさんあった。

 さすがは人気配信者である。


 やがて死屍本さんが僕に目配せをした。

 彼女は嬉しそうな声で笑う。


「さっそく本題ですが、なんと今日はコラボ配信でーす! 話題のアノ人に来てもらっちゃいましたー☆」


『コラボ!』


『誰だ?』


『あ、まさか……』


『嫌な予感』


『ネットニュースで見たかも』


『某佐藤か?』


 さっそく勘付いたリスナーがいる。

 リアクションは賛否両論といったところか。

 死屍本さんは特に気にせず話を続けた。


「今日のゲストさんはこの方! 佐藤キツネさんでーす☆」


 促された僕はスマホの画角に入って頭を下げる。

 なるべく低姿勢で、偉ぶらないことを意識してみた。


「どうもどうも、こんにちは。皆さん初めまして、佐藤キツネです。本日は死屍本さんの配信に呼んでいただきました。よろしくお願いします」


『佐藤だ』


『やっぱり!』


『知らない』


『男とコラボしてほしくなかった』


『佐藤は命の恩人だから俺は許すぞ』


 死屍本さんが大げさに手を叩く。

 彼女はキラキラとした目でこちらを見つめてきた。


「そうそう! 佐藤さんはダンジョンで拉致された私を助け出してくれたんですよー! その時のご縁でお誘いしてみたんです☆」


「死屍本さんが登録者五百万人の人気ライバーと聞いて即決でしたね。売名にぴったりだなぁと」


『本音出すぎで草』


『いっそ清々しいな』


『炎上しそう』


『いつもの佐藤で安心した』


『まあ、恩返しの売名ってことじゃない?』


『それなら納得』


 ヤクザを壊滅させた時、拉致された人間の中に死屍本さんがいたのだ。

 ネットニュースやSNSでも取り上げられており、この事件は国内外でも広く知られている。

 僕としてはヤクザを殺戮するだけのつもりだったので、まさかこうしてコラボ配信に漕ぎ着けられるとは思わなかった。

 死屍本さんからしても、話題性抜群な僕を配信に招けるのは好都合なのだろう。

 ようするに利害の一致というわけである。

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