第21話 ダンジョンのヤクザと対決してみた⑭
僕は親分の死体を注視する。
断面から再生したり、内部から別の魔物が出てくるような兆しはない。
やはり支援系に特化したことで、フィジカル面は常人に近かったようだ。
僕は日本刀を鞘に戻しながらリスナーに謝る。
「すみませんね。あっさり殺しちゃいました」
『いいよ』
『許す』
『スカッとした』
『結局苦戦しなかったな』
『ピンチになってほしかった』
僕が圧勝したことにやや不満そうなコメントが散見された。
なるべく見栄えを考えたのだが、スムーズに殺しすぎたかもしれない。
やはり配信のことを意識した展開にすべきなのだろう。
次回までの課題にしておこうと思う。
僕は近くに転がっていた肉切り包丁を拾い、繋げていた右腕を切り落とした。
大量の血が噴き出すも、数秒後には勢いが弱まって止まる。
放っておけばスキルの効果で新しい腕が生えるはずだ。
こういう時にとても便利でありがたい。
僕はスマホの前でおどけてみせる。
「拒絶反応やら合併症が怖いですからねえ。皆さんもご注意ください」
『不死身と再生持ちが何か言ってる』
『クソワロタ』
『平気で腕を切っておきながら怖がるなよ』
『口先だけの不安で草』
リスナー達の反応に満足しつつ、僕は一つ咳払いをした。
そして話をまとめにかかる。
「さて、これでヤクザは壊滅しました。続いては拉致されていると噂の人達を助けに行きましょう! チャンネル登録と高評価を忘れないでくださいねー」
『了解』
『お疲れ様!』
『最後までみてるよ~』
『よっ、正義の味方!!』
僕のコンテンツのメインはスプラッターな殺戮だ。
ヤクザを全滅させた時点で配信のピークは終わったのである。
だからそこからは速やかに作業を進めていった。
まずはヤクザの拠点に監禁されていた人間を解放し、ダンジョンの出口まで連れていく。
外には警察が待機していたので彼らを押し付けた。
僕は事情聴取が面倒なので逃げ出し、その途中で配信を終了させた。
この日の配信の再生数は瞬く間に二百万回を突破した。
そこからさらに伸びたので、近いうちに一千万回に達するだろう。
ヤクザ壊滅により、僕の知名度はさらに跳ね上がった。
無事に収益化の申請も通ったことで、莫大な収益が入ってくる。
やはりダンジョン配信は最高の仕事だ。
人気があるうちに、さらなる企画をやろうと思う。