第16話 ダンジョンのヤクザと対決してみた⑨
僕は弾丸を浴びながらヤクザ達の中に飛び込んだ。
途端に彼らは銃撃を止める。
こんな状態でぶっ放したら、僕へのダメージより被害の方が大きくなってしまうからだ。
ヤクザ達は慌ててドスやナイフといった得物に持ち替えた。
その間に僕は消火斧を振り回し、彼らの首や手足や胴体を叩き斬る。
破れた臓器や血飛沫がめちゃくちゃになって周囲を染め上げる。
『ど真ん中にいった』
『すっご』
『勇気あるね』
『蛮勇だろ』
『でも佐藤なら負けないよね』
僕にとってはシンプルな構図であった。
自分以外のすべてが敵。
ただひたすらぶち殺せばいい。
何も考えることはなかった。
「はーい、いきますよー」
消火斧が次々とヤクザを解体していく。
近接系スキル持ちと思しきヤクザが反撃してくるが、僕は斬り殺した。
止まれば袋叩きにされる。
だから勢いを付けて攻撃し続けるのが最適解なのだ。
『画面ブレすぎ』
『酔いそう……』
『じゃあ見るな』
『俺は大丈夫』
『いけいけー』
どさくさに紛れてピンを抜いた手榴弾を転がす。
爆発によって新たな悲鳴が上がった。
負傷したヤクザが何人ものたうち回っている。
僕は他の人間を盾にしたのでノーダメージだ。
スポーツバッグからありったけの武器を取り出し、遠慮なく使い潰していく。
死体の武器も借りながら、押し寄せるヤクザを始末し続けた。
血みどろの殺し合いの中、レベルがどんどん上がっている。
この特異なシチュエーションで様々な経験値ボーナスが重なっているのだろう。
レベルアップに伴って新規スキルをいくつか取得しているが、生憎と確認している暇はなかった。
『いくらなんでも強すぎない?』
『この人数を圧倒できるのはレベル差じゃ説明つかないね』
『そもそもヤクザと佐藤のレベル差はほとんどないでしょ』
『じゃあどうして勝てないの?』
『知るかよ』
金属製の大盾を持ったヤクザが猛然と突進してきて僕にぶつかった。
大型トラックのような衝撃とパワーだ。
僕はなんとか踏ん張ろうとするも押し込まれる。
背後を見るとタイルの壁があった。
(このまま大盾で挟んで潰す気か)
抵抗するがびくともしない。
防御に特化したタイプのようだ。
仕方ないので僕は素早く大盾をよじ登って乗り越えると、ヤクザの頭に落下した。
大盾のヤクザは不思議そうな顔をする。
「えっ」
「どうも」
僕はそのヤクザの首を捻り折った。