第14話 ダンジョンのヤクザと対決してみた⑦
タイル張りのダンジョンは蜘蛛の巣のような形らしく、無数の分岐路とカーブで構成されている。
細かい上下階も設けられており、とても複雑なことになっていた。
まさに迷路だ。
優れたマッピング系スキルがなければ位置関係の把握は困難極まるだろう。
そのようなダンジョン内で僕は躊躇なく進んでいく。
見つけたヤクザを残らず葬り、彼らの武器を奪ってまた別の獲物を探す。
現在地はまったく分からないが、どこにヤクザがいるかは知っている。
それは【気配察知B】や【捕食者の嗅覚B】といった感知系スキルの恩恵だった。
今はテンポを優先しているので説明の暇がないが、いずれリスナー達に自慢しようと思う。
僕はノンストップで走り回る。
視界に入ったヤクザは問答無用で撃ち殺し、或いはナイフで首や心臓を突き刺した。
彼らはまともな反撃すらできずに死んでいく。
『いいぞ』
『もっと殺して』
『最高』
『佐藤キツネ!!!』
数種類の魔術が飛んでくる。
魔術系スキルを持つヤクザがいるらしい。
それだけ恵まれた能力があるなら真っ当な探索者になればいいのに。
ヤクザの才能や進路について考えつつ、鉛玉を浴びせてやった。
『魔術師殺しだ』
『佐藤は最強』
『現代のヒーロー!』
『いやダークヒーローだろ』
『犯罪者をぶっ殺せ!』
ヤクザが次々と押し寄せてくる。
数に任せた突撃だ。
もはや悠長にはやっていられないと判断したのだろう。
休む間もなくヤクザが攻め立ててくる。
だから僕は喜んだ。
喜んで殺して殺して殺しまくった。
拳銃、ナイフ、手榴弾、散弾銃、斧、金属バット、剣、ハンマー……武器はなんでもいい。
不死身の肉体を酷使してひたすら命を奪い続ける。
頭の中でレベルアップ音が鳴り響いていた。
身体能力がどんどん上がっているのが分かる。
素晴らしい、気分が際限なく昂る。
全神経が殺戮だけに注がれている感覚が、どうしようもなく心地よかった。
「そこまでだ」
粘質な声で我に返る。
タイルだらけの広い空間で、いつの間にかヤクザに包囲されていた。
数十人のヤクザが銃を僕に向けて睨んでいる。
正面の位置には初老の男が立っている。
地味な色合いの和装だが、カリスマ性を感じさせる佇まいだ。
おそらく彼がこのヤクザの親分なのだろう。