第124話 世界の終わりを始めてみた③
鈴木の首がアスファルトを転がる。
遅れて倒れた身体が鮮血を噴いていた。
痙攣する死体を見て、俺は大げさに肩をすくめる。
「おいおい、弱すぎるだろ。こんなんじゃリスナーが満足しないぜ?」
俺は巨大スクリーンのコメント欄を注視する。
間もなくピックアップされた要望が拡大して表示された。
『つまらない。鈴木復活して~~~!!』
鈴木の生首と肉体が消えて、次の瞬間には完全に復元された状態で現れる。
我に返った鈴木は不思議そうな顔をしている。
「これは……」
「お前の復活を望むコメントを採用したんだ。感謝しろよ?」
答えながら鈴木を蹴り殺す。
不意打ちのキックが鈴木の腹をぶち抜き、木っ端微塵になった内臓が背中から爆ぜた。
吐血した鈴木は膝からぐにゃりと崩れて息絶える。
『鈴木よみがえれ』
コメント欄の力で鈴木がまた復活する。
反撃の素振りを見せたので、首を掴んでへし折った。
『しんでしまうとはなさけない! まだがんばれるぞーーー!!』
鈴木の顔面に拳を叩き込む。
インパクトに耐え切れず、鈴木の頭部が丸ごと消し飛んだ。
『鈴木の残機三つにして』
復活した鈴木を後ろから絞め殺す。
そのまま同じ方法で残機を削り切った。
鈴木は地面を叩いて苦しがるが、もちろん手加減はしない。
『まずい! もう一回!』
鈴木がようやくハッキングを行使した。
周囲の建物が巨大な手をなって襲いかかってくるが、俺はそれを躱して走る。
助走の勢いを乗せた膝蹴りは、鈴木を肉塊に変えた。
『まだ生きてるでしょ』
肉塊の鈴木が縋りついてくる。
俺は執拗に脳を踏み潰して黙らせた。
さらに念を入れて加熱する。
『十秒間、死ぬの禁止で』
綺麗な姿で蘇った鈴木が殴りかかってきた。
カウンターで心臓を破壊しても構わず仕掛けてくる。
十秒が経過した時点で、鈴木は人体模型のようなビジュアルになっていた。
『コンティニューしよう』
ドット絵のようになった鈴木がナイフで俺を滅多刺しにする。
俺は笑いながら鈴木の股間を殴り、そこにあるモノを引き千切った。
掴んだそれはドット絵なのでよく分からなかった。
『ねばぎばっ!』
鈴木は何度も復活する。
俺は殺し続ける。
戦いは終わらない。
リスナーの狂気と悪意が、無限の苦しみを生み出すのだった。




