第114話 殺戮決戦を始めてみた③
スポットライトがずれて、先ほど僕を斬った西洋甲冑を照らした。
鈴木は白紙の紙を広げて、台本を読むかのように語る。
『ゲム・ローレル。売れない劇団員から秘密組織に出世するなんてさすがですねえ。【絶対焼却】と【剣術】のスキルが決め手だったのですか。物理戦闘ではメイソウ最強のようですが、バナナと納豆が苦手なのはかわいいですねー。おや、三歳の頃に刺されたせいで、ハチも嫌いでしたか』
ゲム・ローレルと呼ばれた西洋甲冑の男は、唸り声を上げながら全身から炎を噴き出す。
おそらく激怒しているのだろう。
八つ当たりとばかりに炎の斬撃が飛んできて、僕を真っ二つにして燃やし尽くした。
数秒後に復活した時、スポットライトは木刀を持つカウボーイの中年男を示していた。
カウボーイはうんざりした顔で懇願する。
「あー、やめてくれよ。お願いだ、頼む」
『遠慮しなくていいですよ、スイフォンさん。あなたが半径十メートル以内の人間のスキルをコピーできるのはお見通しです。コピーしたスキル同士を合体させて強化できるのも知ってますし、コピーできない状態ではゴブリンにも勝てないのも承知してます。あなたが戦争孤児の無国籍で、あちこちの犯罪組織から狙われてるのも把握済みです』
カウボーイは深々とため息を吐き出す。
自身の弱点を晒されたことに文句を言いたそうにしているが、苦々しい表情で俯くに留めている。
相手が相手なので意味がないと悟ったようだ。
水玉パジャマの青年にスポットライトが当たると、鈴木は頬杖をついて告げる。
『リャン・ポー。脳を弄られて廃人となった哀れな被験体ですね。自分が世界最高のヒーローとして崇められる幻はどうですか? 現実のあなたはメイソウに魔力を供給するだけの装置になっていますが、きっと満足してるんでしょう』
「ふぁー…………」
リャン・ポーは空気の抜けるような声を発する。
鈴木の言葉を理解しているかも定かではなかった。
その後も鈴木はメイソウの素性や能力に関する暴露を繰り返した。
不在のメンバーについても、顔写真を載せながら懇切丁寧に解説してみせた。
意趣返しの意趣返しということで、リスナーの反応も様々だった。
『えげつねえ……』
『プライバシーなんてなかったんだ』
『おれたちの個人情報も知られてそう』
『手遅れでしょ』
『あきらめが肝心』




