第110話 大逆転してみた⑦
『佐藤君は最高傑作の一人です。不死身に特化していて……いや、正確には不滅という表現が適切ですかね。とにかくその回復力が特徴です』
鈴木が説明する途中、メイソウの一人である西洋甲冑の戦士が跳びかかってきた。
内部から燃えるその甲冑戦士は、横殴りに大剣を振るう。
無防備に話を聞いていた僕は、そのまま胴体を真っ二つにされてしまった。
「うわっ」
転倒した僕は業火に包まれる。
耐性スキルを凌駕したダメージにより、再生力が阻害されていた。
肉体が修復されず、間もなく目の前が真っ暗になる。
『佐藤君は極端に死にづらいだけで、このように割と簡単に殺せます。まあ、すぐに復活しますが』
意識が戻った。
炎は既に消えていた。
肉体が完全に炭化してから再生したらしい。
『佐藤君には復活系のスキルをいくつも搭載していますが、最も強力なのは他者の記憶から蘇るスキルですねえ。彼を知る者が一人でもいれば発動可能なので、実質的に不滅というわけです』
「馬鹿な……それもあなたのハッキング能力によるものですか」
『ええ、そうです。アビスさんも付与してほしいですか?』
鈴木は半笑いでやり取りする。
アビスから苛立ちのようなものを感じた。
きっと会話で時間稼ぎをしつつ、どうにか状況を打破しようと企んでいるようだ。
そして、鈴木もそれくらいは想定済みだろう。
分かった上でからかっているのだ。
『佐藤君は配信で世界的な知名度を獲得しました。これでもう絶対に不滅です。無限に復活できますからね。ちなみに封印も意味ないですよ。仮に"詰み"の状況になっても、新たな佐藤キツネが生まれるだけです。個体数の制限はかけてませんから、生かさず殺さずの策は事態の悪化を招くだけですね』
「つまり理論上、佐藤キツネは増殖できると?」
『その通りです。最低限のロックはかけてあるので、いきなり増えることはありませんけどね』
僕の能力全般は鈴木に支配されていた。
彼の気まぐれで木っ端微塵となって即死する可能性もあるわけだ。
『暇潰しに配信会社の運営をやってるのですが、まさかライバーになるとはなるとは思いませんでしたよ。しかも規約違反だらけですし。僕に運営権限がなかったら、とっくの昔にBANされてますね。まあ、配信サイトは元から無法地帯に近かったので、別に大した問題ではありませんでしたが』
鈴木はダラダラと愚痴る。
その視線は意味深に僕を見ていた。
僕は軽く手を振っておいた。




