第105話 大逆転してみた②
『今、何て言った……??』
『SSSランク』
『チート過ぎて草』
『なろうかよ』
コメントが妙に白けている。
もっと盛り上がってくれると思ったのだが。
インフレ具合が急すぎて良くなかったのかもしれない。
アビスは蔑みを隠さず苦言を呈する。
「冗談にしてもチープすぎますね。笑えませんよ」
「そう思うのなら調べてみてください。鑑定系スキルなら一発でしょうから」
僕は両手を開いて無防備に呼びかける。
数秒後、虹田が「本当だ。ふざけてやがる」とぼやくと、メイソウの面々の顔色が変わった。
それは驚愕だったり、恐怖や逡巡、怒りや嫉妬といったものだった。
アビスだけは感情が読めず、ただじっと僕を注視している。
ここで僕は大事なことを思い出して手を打った。
「あっ、そちらの方……千波さんでしたっけ」
「何?」
「もうすぐ死ぬので遺言を用意してくださいね」
そう忠告すると、千波が不機嫌そうな顔になった。
彼女は影を大鎌の形にして、ゆっくりと構えながら僕に確認する。
「宣戦布告?」
「ただの事実です。前触れもなく即死するより温情があると思いませんか」
千波は尚も言い返そうとするが、その前に彼女の身に異変が生じた。
動き出そうとした千波がよろめいて片膝をつく。
彼女の足先が薄れて消えかかっていた。
ただ透明になっているのではなく、物理的に失われているようだ。
その異変は脛から膝へと徐々に進行していく。
片脚の半ばまで失い、千波は困惑していた。
「えっ」
「僕の拳があなたの操る影に触れました。それによって【存在抹消EX】の発動条件が満たされました。あと十秒くらいであなたの存在は消滅して、全人類の記憶からもいなくなります」
「そんな、嘘……」
「ちなみに僕は再生能力で記憶が変わりません。だからあなたのことも忘れませんのでご安心を」
喋っている途中に千波が襲いかかってきた。
無数の持つ大鎌が分裂し、無数の刃となって僕を切り刻む。
しかし【再生SSS】を持った僕には通じない。
切られながら肉体が回復するため、大鎌が振り抜かれた段階で無傷に戻っていた。
再生スピードが高すぎるので切断されず、ただ立っているだけで防御する必要もなかった。
血飛沫だけが周りに散っている。
焦る千波は一心不乱に攻撃を繰り返すも、その身体はどんどん薄れていく。
腰まで失った彼女はうつ伏せに倒れ、最期は泣きながら助けを求めて消滅した。




