第100話 真実を告白してみた⑨
十分以上にも及ぶ暴露がようやく終わった。
ハイテンションを維持するハルカは楽しそうに手を振る。
「これで佐藤キツネの秘密は丸裸ですねー! プライバシーなんて皆無でーす! 住所も連絡先も通帳の暗証番号も公表しちゃいましたー!」
『えげつない』
『本当に容赦ないね……』
『自宅に人が集まってるらしいよ』
『見た見た。祭りやね』
『俺も行ってみようかな』
『身バレの恐ろしさを知った』
コメントを見たハルカの笑みが深まる。
悪意に満ちた良い笑顔だった。
「佐藤キツネさーん! 暴露配信はどうでしょうかー! 秘密にしていることを無神経にバラされる気持ちを教えてくださーい!」
ハルカが挑発的な口調と言葉選びで尋ねてくる。
僕は涼しい表情で応じた。
「半分正解といったところです。いやはや、なかなかの調査力ですね。ところで次の策は何ですか?」
「強がりいただきましたー! 悔しかったり恥ずかしいなら素直に言った方がいいと思いまーす!」
何かしら僕のリアクションを引き出したいらしい。
しかし、ここで向こうの思惑に乗るのも癪だ。
平常心を意識しつつ、僕はハルカに問いかけた。
「嫌がらせは以上でしょうか。メイソウもやることが小さいですね。国の支配者とは思えない振る舞いですよ」
「これはただの余興でーす! あなたの断罪は今から始まりまーす!」
ハルカは心底から嬉しそうに言う。
茶番で少し緩んでいたメイソウの雰囲気が再び張り詰めていく。
獰猛な殺気が肌にピリピリと刺さっていた。
「あなたは暴かなくてもいい真実に首を突っ込みましたー! 世間を不必要に乱していまーす! それはつまりメイソウの敵というわけでーす!」
「敵ならどうするのでしょう。裁判でもしますか?」
「あなたを法で裁く気はありませーん! 秘密主義を崩したので、次はあなたの誇る暴力を否定しまーす!」
ハルカが宣言した直後、金縛りが解けた。
同時にメイソウの殺気が頂点へと至る。
(やれやれ、結局こうなるのか)
暴露は本当にただの嫌がらせだったらしい。
僕の心身を徹底的に叩き潰したかったわけだ。
そして今から肉体面への攻撃が始まるのだろう。
戦闘は避けられそうにない。
幸いにも暴露中の時間で肉体の回復がかなり進んでいた。
全快ではないにしろ、十分に戦える程度の状態にはなっている。
ため息を吐いた僕は前に踏み出す。
いや、前に踏み出そうとした。