神楽家の秘密
「私の家では子供は道具なの」
その言葉が家庭を語る上での一途の第一声であった。
「代々受け継がれてきた家業を続けるための道具」
絆も
愛情も
「家業の前では意味がない家なの」
リビングの中央で正義は何かを言うわけでもなく……黙って一途の話に耳を傾けた。
専業主夫の探偵推理
「それでも兄弟の仲は良かったのよ」
私は兄と弟が好きだったし
「二人とも優しかった」
でも兄が誰かに殺されてしまって
「恐らく家業のせいで」
なのに父は
「事件のことはお前が考えることじゃない」
警察が調べている
「まるで道具を変えるように直ぐに弟の各務に後を継がせるための訓練に入ったの」
……結局、兄を殺した犯人は見つからないまま……
「でも父はそんなこと何とも思っていない」
だから
「家を出る理由を探してたの」
『それが心の誕生であり貴方との結婚だったの』
一途は正義を見つめ
「結局、私も正義くんと心に同じことしたわね」
家を出る道具にしてしまったわ
と苦く笑みを浮かべた。
正義はそれに微笑みを返すと
「んー、一途さんがそうでも俺は心ちゃんが生まれてきてくれて凄く嬉しかったし今一途さんと心ちゃんと家族でいられることが幸せだと思ってる」
と答えた。
「俺も一途さんと同じ」
家を逃げ出す言い訳にしたから
「でも今はもう逃げないって決めたから」
……始まり方は理想じゃなくても……
「今から一途さんと心ちゃんと俺との良いと思える家庭を作っていけば良いだけだよね」
話してくれてありがとう
一途は泣きながら笑顔を見せると
「正義くんは強いね」
踏みとどまってちゃんと踵を返せる
「私も、頑張るわ」
正義君と結婚して良かったと今は思う
と正義の手を握りしめた。
正義はその手を強く握り返し
「俺こそありがとう、一途さん」
と答えた。
10月28日。
空は高く。
そして、街の木々の彩りが秋を感じさせる頃に正義は心を乳母車に乗せて一途と共に国立図書館へと訪れたのである。
そこが一途の職場であり、神楽家の家業が営まれている場所であった。
一途の父・進と弟の各務が待っていたのである。
国立図書館は東京の中心地かつて江戸城があった皇居の近くにある巨大な図書館であった。
その書籍は日本中の書籍を網羅し、且つ海外の本も幅広く集められていた。
ただ、全ての本を置くには場所が足りないということで半数以上がデータ化されて保存されていたのである。
建物はシンメトリーの洋館でその奥側に新館別棟と言われる少し小さめの洋館があった。
正義は乳母車を畳んで心を抱っこ紐で抱っこして、一途と共に国立図書館の本館へと足を踏み入れた。
「前にパソコンで本の検索を掛けたことはあったけど」
中に入るのは初めてだ
正義は吹き抜けの天井に建ち並ぶ本棚と本を見回しながら
「凄い」
と呟いた。
一途は笑みを浮かべ
「正義君は本が好きみたいね」
と告げた。
正義の本棚の本が入れ替わっているのを一途は知っていたのである。
極普通の小説から専門書までカバー範囲は広い。
知識欲が高いのだろう。
正義は頷くと
「知らないことを知るのは楽しいからね」
と答えた。
本館の二階に登りその右手側にある警備員が配備されている扉を抜けると新館別棟へ繋がっている。
一途は警備員に会釈をして正義を連れて渡り廊下を通ると新館別棟へと入った。
そこに、見慣れない人物と見覚えのある人物が立っていた。
「立花……あ、まゆずみさん」
それに全員が振り向いた。
小学生の愛らしくて綺麗な美少女と凛とした美青年とカッコいい系の青年。
そして刑事らしい二人の男性がその人物を取り巻いていた。
まゆずみと呼ばれた人物は一途を見ると笑みを浮かべ
「久しぶりだね、一途ちゃん」
ここでは立花でいいよ
と答えた。
本名をまゆずみ聡といい、若干37歳でありながら現在の警察庁刑事局長という人物である。
正義は一途を見ると
「一途さんの知り合い?」
と聞いた。
一途は頷くと
「和則兄さんの親友で他にも黒崎さんって人と神在月さんって人もよく来てくれていたの」
兄の命日以外でも
と言い
「そう言えば、黒崎さんは5年ほどして急に来られなくなったけど」
何かあったんですか?
と聞いた。
聡はそれに苦く笑むと
「……あ、いや……俺も最近は連絡を取ってないので」
でも元気にしていると思いたいが
と言葉を濁すように告げた。
一途は微笑み
「そうですか、お元気だったら良いんです」
黒崎さんも兄が亡くなってから良く来て兄の話をしてくれていたから
「ただ最後に来られた日に変なことを言っていたので気になっていて」
と呟いた。
それに黙って一途を見ていた少女が
「それは、どういう内容だ?」
教えて欲しい
と聞いてきた。
正義は一瞬「ん? あれ? 幻聴?」と見た目と口調の違いに目を見開いた。
一途も同じように目をパチクリと開けていた。
聡は二人の反応に苦笑しつつ
「紹介しておく」
と言い
「この少女が皐月綺羅くん、そして隣の青年が彼女の兄で悠君、隣が飯島功一君……私が期待している探偵だ」
と言い
「こっちが私の部下で厚村日和に鮎原静音だ」
もしかしたらこれからこちらに来る機会があるかもしれないので
と告げた。
一途は「探偵……」と目を瞬かせたものの
「その、それが」
もし自分が来れなくなって……立花さんか森の熊さんが来たら伝えて欲しいことがあるって
「立花さんは分かるけど森の熊さんって誰だろうって思ってて」
と苦笑を浮かべた。
聡は頷いて
「一途ちゃん、それを教えてもらえないだろうか?」
と告げた。
一途は頷くと
「意味は全く分からないんですけど」
と言い
「女性たちが手にしたものに災いは眠る」
でした
と告げた。
正義は横で聞きながら
「……女性たちか」
と呟いた。
それに飯島功一という青年も
「女性たちって誰だろ」
と呟いた。
正義は不意に浮かんだ存在に
「パンドラ」
と言い、同時に皐月綺羅という少女も
「イブ」
と告げた。
聡は二人の言葉に
「なるほど、二人とも確かに災いを齎す禁断の箱と禁断の果実だったな」
と呟いた。
皐月悠という青年はそれに腕を組み
「パンドラの箱はそのまま箱だけど」
禁断の果実って良くリンゴと言われるけどそれで良いのかな?
と呟いた。
正義は頷き
「良いと思うよ」
と答えた。
「真偽は分からないけど……Appleにはリンゴという意味以外の内容で禁断の果実になったという説話もあるからね」
皐月綺羅が正義をみつめ
「お前、詳しいな」
と告げた。
正義は驚いて苦く笑うと
「この子、面白い子だよね」
言葉悪いけど頭の良い子だ
と心で呟きつつ
「そういう君も分かったんだから小学生にしたら物知りだと思うよ」
と返した。
そう、知っている人は少ないのだ。
飯島功一は二人に
「それで、綺羅。Appleの別の意味ってなんだ?」
と聞いた。
正義は皐月綺羅と同時に
「「喉仏」」
と答えた。
それに全員が驚いた。
鮎原静音は彼女を見て
「綺羅ちゃん、本当なのかな?」
と聞いた。
綺羅はそれに
「当然だ」
Adams Apple
「それでアダムの喉仏と訳すんだからな」
それでリンゴが禁断の果実と言われるという説もある
と答えたのである。
正義は彼女を驚いてみた。
小学生の少女がそれを知っているのだ。
聡は正義を一瞥し一途に
「一途ちゃん、彼は?」
と聞いた。
一途はそれに
「私の夫と子供です」
と笑顔で答えた。
正義は彼女を見て笑みを浮かべると
「神楽正義です」
この子が心ちゃんです
と答えた。
聡は笑顔で
「そうか」
幸せになりなさい
と言い
「正義君、一途ちゃんをよろしく頼む」
彼女は深い愛情を持った子だから大切にしてくれ
と頭を下げた。
正義は頷いて
「はい、必ず」
と答えた。
黙ってジーと見ていた心が手を上げると
「はーいー」
と答えた。
きっちり返事を理解している心であった。
そこへ一途の父親の進と弟の各務が姿を見せた。
聡は進に視線を向けると
「今回はありがとうございます」
必ずお約束はお守りします
と頭を下げて足を進め掛けた。
正義は不意に
「あの、約束と言うのは」
と聞いた。
聡は肩越しに振り向き
「和則の……死の真相を解明することだね」
当時、警察の捜査では和則の死は迷宮入りだった
「だけどおじさんが俺と黒崎と神在月に頭を下げて」
何年かかってもいいから必ず息子の死の真相を明らかにしてほしいと
「警察に任せていられないと」
だから俺も黒崎も神在月もそれぞれの分野から情報を集めていたんだ
と告げた。
正義は一途を見た。
一途は目を見開き父である進を見つめた。
「お父さん、本当なの?」
進は視線を伏せて
「息子の死の真相を知りたいと思うのは親として当然だろ」
例え家業のことがあって私情を抑えなければならない立場であっても
「人である以上押さえられない感情もある」
警察が迷宮入りと言ってきた時に彼らに頼んだんだ
「彼らなら信用できると思ってな」
と言い、正義を見ると
「正義君、よく来てくれたな」
こちらへ
と歩き始めた。
正義は頭を下げて、そっと一途の手を握りしめた。
ちゃんと。
ちゃんと。
一途の家族も温かい絆のある家族だったのだ。
正義は聡たちと分かれて応接室へと向かった。
応接室は格式のある落ち着いた造りで、正義も一途も革張りの座り心地の良いソファに腰を下ろした。
進と各務も正面に座り三人を見た。
進は一途に
「一途、お前が私を嫌っていることは分かっている」
国史書師という仕事のことも
と告げた。
一途は視線を下げて
「……でも、今の生活を支えてもらってるのは分かってる」
それにお父さんがお兄さんのこと考えてくれていることが分かったから
と父親を見つめた。
正義は一途が父親と家族を受けいれ始めているのだと理解して笑みを浮かべた。
父親は笑むと
「そうか、お前には辛い思いをさせてきた」
すまなかった
と言い
「それでこれからどうしたい?」
と聞いた。
「俺は三人で家に帰ってきてもらいたいが」
一途は正義を見た。
正義は笑顔で
「一途さんが良いと思う形で俺はいいよ」
三人一緒だから
と答えた。
一途は父親に
「1年待ってもらってもいい?」
と聞いた。
父親は不思議そうに
「1年? 何故だ?」
と聞いた。
一途は微笑んで
「正義君、大学を受験したいんだと思うから」
専念してもらいたいの
と告げた。
正義は一途を見た。
「一途さん、なんでそれ」
一途は微笑んで
「わかるわよ、何時も見ているんだから」
正義君、実家から大学受験用の本を持ってきているでしょ?
「家と心のことは私に任せて予備校へ行って頑張って」
それで道を決めてから家に戻りましょ
と告げた。
見てくれていたのである。
正義は熱く込み上がる思いを抑えつつ
「ありがとう、一途さん」
と言い
「お義父さん、俺来年必ず東都大学の法学部に受かります」
それまで待っていてください
と頭を下げた。
進は微笑み
「そうか、わかった」
期待している
「頑張ってくれ」
と告げた。
各務は二人を見ながら
「まあ、俺も心ちゃんと毎日会えるようになるなら嬉しいけどな」
と告げた。
心は笑顔で
「はーいー」
と答えた。
正義と一途は話が終わると久守冬馬の車で帰宅の途についた。
自宅アパートの近くの駅の商店街の入口で車を降りると買い物をして家路へと歩いて向かった。
途中で正義は一途に
「俺、法学部に入って探偵になろうと思ってるんだ」
今まで渡井さんが言ってきてくれたような些細な困りごととかの相談に乗れるそんな気軽な探偵に
「まあ、儲けにならないかもしれないから……その辺りは追々考えて行こうと思ってるけど」
と笑みを浮かべた。
一途は笑顔で
「正義君らしくて良いと思うわ」
それに私が養ってあげるから
「頑張って」
とさっぱり告げた。
正義は心を見て
「じゃあ、専業主夫の探偵で頑張るかな」
ね、心ちゃん
と笑いかけた。
心は一途と正義を交互に見るとニパッと笑って
「はーいー」
まんまー
「ぱぱぱー」
と答えた。
正義は「おおお」と感動すると
「心ちゃん日々成長してるねー」
とギュギュっと抱きしめた。
一途はクスッと笑って
「心、いい子に育ったね」
と優しく頭を撫でた。
心は笑顔で
「あーい」
と答えた。
正義たちが自宅アパートの前に来たとき渡井静子が三人を見て
「あらあら、神楽君に心ちゃんに奥さんね」
と言い
「う~ん、家族水入らずじゃ悪いわね」
と携帯を手にした。
正義はそれに
「あ、何かあったんですか?」
と聞いた。
静子はそれに腕を組むと
「それがね、武が貴方に力を借りたいって連絡を入れてきたのよ」
それで家を訪ねて留守だったところなの
と告げた。
一途は笑顔で
「良いわよ」
頑張って
と言い
「心は見るわ」
と告げた。
正義は抱っこ紐を外しながら
「ありがとう、一途さん」
と心を託し
「渡井さん、いいですよ」
と答えた。
静子は「ごめんなさいね、神楽さん」と言い
「神楽君を借りるわね」
と告げた。
一途は首を振り、頭を下げて
「正義くんの事お願いします」
と答え
「心、今日は私とお留守番しましょ」
と抱いた。
心は笑顔で
「あーい」
と答え、一途にギュッと抱きついた。
やはり、母なのだ。
正義はそれを見て
「良く母親の愛は無償の愛っていうけど」
本当の無償の愛は子供から母親への愛なんじゃないのかなぁ
「心ちゃん、一途さんのこと凄く大好きだし」
一途さんが心ちゃん大好きで嬉しい
と心で呟きながら、部屋へと戻っていく一途と心を見つめた。
静子は正義に
「良かったわね、神楽君」
と言い
「心ちゃんも今日は凄く安心してるわ」
と微笑み
「じゃあ、脳筋甥っ子を助けてあげて」
と携帯をかけて渡井武に連絡を入れた。
武と久守晴馬が持ってきた事件は密輸入の取引の場所の割り出しであった。
取引の情報を持っている男を掴まえたのだが黙秘を続けており、家宅捜索で出てきた手帳に場所が書いているようなのだが分からないのである。
今日の日付けの欄に書かれているので今日の可能性が高いという緊急を要する依頼だったのである。
警察庁のビルの応接室で正義は武と晴馬に手帳を渡され事情を聞いた。
正義は手帳を見て
「この今日の日付けの欄の文字と数字の羅列が取引場所を示しているかもしれないということなんですね」
と呟いた。
武は前に座り
「そうだ」
今日の日付けなので一分一秒も惜しいということで
「力を借りたい」
と告げた。
正義はじっと見つめた。
『H6L8J4Z6A6Q2K6O2-15 V4G2L8-11-23-50』
確かにローマ字を取り出しても文字にはならない。
かといって以前のような書籍番号でもない。
正義はう~んと唸ると
「UnicodeじゃないよねZとかQはないし」
と呟き
「ハイフン前はローマ字と数字が交互」
HLJZAQKO
「数字は68466262か」
というと
「んん? ローマ字と交互の間で使われている数字は8642だけってことは」
そう言う可能性があるのかな
と口元に指先を当てると
「あのパソコンお借りできますか?」
と聞いた。
武は頷いて
「久守、頼む」
と告げた。
晴馬は頷いて部屋を出るとノートパソコンを持って戻ってきた。
正義はキーボードを見ると
「汎用的にローマ字を利用して文字に直すとすればこれなんだけど」
とキーボードをかな入力にして打ち始めた。
『く6り8ま4つ6ち6た2の6ら2-15』
『ひ4き4り8-11-23-50』
晴馬はそれを見て
「何故二つ目の文字はそのまま数字に?」
と聞いた。
正義は笑顔で
「数字も文字にできるけど意味が不明だし……だったら二つで一つの文字と考える方が道理かなぁと思って」
それにローマ字の間に使われている数字に法則があるので
と答えた。
「テンキーで言う8642は他の使い方もできるから」
そう言ってテンキーを見るとにっこり笑った。
「そう考えると」
……うらやすしちとりー15 ひくらー11―23:50……
武と晴馬は目を見開いた。
晴馬は慌てて
「少しお待ちください」
とパソコンから千葉県浦安市の地図を出すと
「浦安市千鳥と言うと舞浜の倉庫街です」
と告げた。
武はその地図を見て
「ここに日影倉庫がある」
恐らくそこにある11番倉庫に23時50分ということか
と呟いた。
正義は息を吐き出すと
「当たっていたらいいけど」
と呟いた。
晴馬は正義に
「何故この言葉が?」
と聞いた。
正義はそれに
「先のローマ字はかな変換で50音に直せるんですけど、言葉にならない」
横にある8642という数字はNUMLOCKを外すとカーソルの移動になるので
「最初のかな変換の文字から次のテンキーで示す方向に移動した文字が答えかなと」
と告げた。
武はフムッと
「なるほど」
と答えた。
晴馬は笑むと
「流石ですね」
と言い、武と顔を見合わせると部屋を出て担当部署に知らせ、正義を送った後で彼らと合流して浦安にある日蔵倉庫へと向かった。
そして、夜の23時50分にアタッシュケースを持った男と倉庫の鍵を持った男が現れたのである。
そう、正義の告げた通りの場所と時間であった。
武はパトカーのライトをつけると
「そこまでだ」
と言い
「その中身を見せてもらおうか」
と告げた。
アタッシュケースの中身は現金1億で対象の倉庫の中には輸入禁止の象牙や様々な物品が置かれていたのである。
密輸入業者を一網打尽にできたのである。
その事を告げると黙秘を続けていた被疑者は観念したように全てを自白したのである。
暗号を解かれては手帳にかかられた言葉が全て分かると観念したからである。
翌日、一途が心を仕事場である国立図書館へ連れて行くと、正義は家の掃除と洗濯を済ませて予備校へと向かうために家を出た。
その時、渡井静子がアパートの二階から降りてきて昨夜の逮捕劇の報告をしてくれたのである。
正義はその話を聞き
「それは良かったです」
と安堵の息を吐き出しながら答えた。
静子は正義に
「大学受験するのね」
頑張って
と言い
「次からは警察の依頼には依頼料貰いなさい」
と告げた。
正義は驚いて
「え!?」
と声を零した。
静子は笑むと
「立派な仕事よ」
それに
「予備校へ行く足しになるわ」
と言い
「依頼としてちゃんと受けるつもりならだけど」
正義君の性格だから受けたらちゃんとするでしょ?
「考えたら正式な依頼に無料はダメだと思ったの」
今までごめんなさいね、気が回らなくて
と告げた。
「武に言っておくわ」
正義は笑むと頭を下げて
「いえ、俺の方こそありがとうございます」
宜しくお願いします
と答え
「じゃあ、行ってきます」
と予備校へと向かった。
静子は笑顔で
「頑張りなさいよ!」
と見送った。
受験モードには遅い出発だったがそれでも新しい一歩であった。
そこには太陽が輝き世界を明るく照らし出していた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。