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混ざった夜(つまりC)

作者: 石花 泉
掲載日:2023/02/11

 私は甲虫に拒絶され、甲虫は街灯に冷たくあしらわれたが、同時に街灯は私に無関心である。

 私が甲虫に覚えた憐憫は結局たんぱく質のスクリーンに映し出された自己憐憫であり、どうという話ではない。道端で潰れていたアブラゼミと、何故か私の髪の毛に潜り込んでへばりついていた蛞蝓(なめくじ)の二つの死骸を思い出した。遠くで蛾が踊っている。

 自分の両手が常に糞尿臭く感じてしまうようになってもう数年経つ。自分を騙しながらにじり歩いて来たが、激流の向こう岸に繋がる分岐路がどこなのか未だに分からないまま老いてしまった。おそらくもう通り過ぎてしまったのだろう。

 煙草に火を点ける。もどかしさを肺の痛みが静めてくれる。機械が(さえず)るので、左手に熱を押しつけると皮膚に灰の跡が残った。灰の軽さから煙の重さを求めようとするのはいつでも変わらない。先刻まであった熱はもう思い出せない。水膨れに上書きされてしまう。

孤独な綱渡り師は疲れの果てに休むことができない。終着点はまだ水平線の向こう側だった。

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