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煉獄の森~EZAM~  作者: 結城朔夜
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vision:ⅩⅩⅥ 壊された日常~消えた記録と魔女の再来~

鏡が告げる言葉に、何の意味があるのか?

私に秘められた力とは、何なのか?


その答えが出ぬまま

私の誕生日まで、あと3日となった。


たとえ、どんな運命になったとしても

私は、………。

『あと、3日………』


ドレッサーの鏡に浮かび上がった文字は、暫くして消えた。

3日後は、ちょうど私の誕生日だ。

その日に、一体何があるというのか?


謎が謎を呼んで、私は訳も分からず困惑して。

ふと急に眠気が襲ってきて、それに抗えず、気付けば私は意識を手放していた。


翌日、12月26日。

夜明けと共に目を覚ますと、私は昨日のことを頭の中で整理していた。


『同じ過ちは、もう繰り返せない。これ以上、犠牲には出来ない。………だから、此処で終わりにするの』

『あなたも、もう気づいているはずよ。自分がなぜそこに居るのか。なぜ、引き寄せられたのかを』

『早く目覚めなさい。本当をあなたを、取り戻しなさい。そして解放なさい。あなたの、本来の力を………』


あの言葉に秘められた真意とは?

本当の私とは?

目覚めろって、一体何に………?


ただひとつだけわかったことがある。

この世界に飛ばされたのには、確かな理由があったのだ。

それが一体何なのかは、まだわからないけれど。

それに、この世界自体の謎も、まだまだわからないことがたくさんある。

以前から感じていた違和感にも、何かしらの理由はあるのだろうとさえ思えて。


考えることが山積みで、何から手を付けていけば良いのか分からなくなって。

気付いたときにはだいぶ時間が経っていた。


暫くして部屋の扉をノックする音に気付いて返事をすると、「失礼します。おはようございます、千紗都さん」と、仮宥愛が朝食の用意が出来たと声を掛けに来てくれた。

食堂へ移動すると、既に未遊夢と未幸姫が先に朝食を摂っていて、あとから遅れて奏音も姿を見せて。

結翔は今日もお寝坊さんかな?なんて思って居ると、ようやく姿を見せた。

皆が各々朝食を済ませて、それぞれの日程を決めて一日が始まる。


一件何気ない、いつもの光景。

でもその光景にも、客観的に見るとまた疑問が湧き上がった。


住人と従者の区別って、何なのだろうか?


元々、此処にいるのは全員教会に引き取られた孤児で。

それなのになぜ、未遊夢達を始め住人と呼べる者と従者となる者に分けられているのか?

一目見てはっきりしていることと言えば、住人は素顔を出して従者は仮面を被っている事。

でもそれは以前、仮宥愛から聞いた話でなんとなくわかっている。

仮面を付けているのは、5年前の悲劇で生き残ったという子達が負った火傷を隠すためだと言うことを。

だけど、それ以降に館に来た子達も仮面を付けてる者がいて、中には未遊夢達と同年代の子だって居る。

本当に、その線引きは何なのだろうか。


(あとで仮宥愛さんにでも聞いてみようかな………・?)


ぼんやりとそんなことを考えていると、ちょうど薬草園から薬草と詰んできたのか、結翔が来て声を掛けてきた。


「千紗都、また考え事?」

「あ、うん。………ちょっと、ね」


今考えていたことを結翔に話しても大丈夫かとなんとなく思って、私は言葉を濁してしまう。

だが結翔は特に気にした様子もなく、「とりあえず、これ置いてくるね」と言って医務室へと向かった。


(何やってるんだろう、私………)


これではまるで疑心暗鬼に陥っているような気がして、私は頭を振って思考を切り替えた。

ふうっと大きく息を吐くと、また教会の図書室に足を運んでいた。


神話にまつわる本はいくつか読んでは見たものの、結局は憶測や想像の域を越えない作り話がほとんどだ。

けれど、これだけの文献があるにもかかわらず、なぜ異世界は実際に存在すると知ることが出来るたのだろうか?

そもそも、これらの文献に記されていた【始まりの神子】という存在も、実際に存在したのかどうかも妖しくて。

だが、実際に存在していたからこそ、こうして今、語り継がれるかのように書き記されているのだろう。


同時に、先日読んだ文献に書かれていた【5つめのエリア】や、【原初の世界】について調べようとしたものの、古すぎて保管出来なかったのか、所々が痛んでいる者が多く、これ以上は調べようが無かった。

だとしても、気になることが一つ増えた。


「………20年前の記録が記されたものだけが、何も無い………?」


今まで過去の文献を調べていて、気付かなかったが、年代を追うように調べていて、なぜか20年前の記録だけが見当たらないのだ。

他の文献を確認してみても、やはり20年前に関する記録だけがなかった。


「なんでこの時期だけないんだろう?………20年前に、何かあったのかな?」


そう考えていると、ふと外の方で何やら叫び声が聞こえた気がして。

何かあったのかと図書室を出て確認すると、外で遊んでいただろう子供達が一斉に息を切らすように走り、教会へと戻ってきて。

その表情は何故か恐怖に染まっていた。

外にはまだ数人の子供が残されていて、その子らも急いで教会の中へと走ってくると、その後ろに何かが見えた。

そして、その姿を確認した瞬間、私は一瞬目を疑った。


「え?アレは、影………!?」


そこにいたのは、影の群れだった。


何故、急に影達が襲ってきたのか?

だがそんなコトを考えている余裕は無い。

一刻も早く、残った子供達を避難させなければいけない。

そう思って居るのに………。


(身体が、動かない………!?)


まるで金縛りにでも遭ったかのように身体が動かなくなり、ただ状況を見守ることしか出来なかった。


どうして、こんな時に動けないんだろう?

どうして、こんなにも情けないんだろう?

どうして、私はこんなにも弱いんだろう?


どうして、どうして、どうして………。


そんな感情でいっぱいになって、目の前が真っ暗になりかけた時だった。


「早く、そこから離れなさい!」


七海の声が響いた。


「七海………?どうして……・…」

「説明はあと!とりあえず、道化師とお人形さん達を呼んできてもらえるかしら?」

「わ、分かった………」


たぶん仮宥愛と結翔のことだろうと判断し、私は急いで探しにいくと、二人とも騒ぎを聞きつけたのか、すぐに会うことが出来た。


「仮宥愛さん!結翔!今影達が襲ってきてて、七海が………」

「七海さんが?………わかりました。千紗都さんは一旦、皆さんと一緒に避難していてください」


そう言うや否や、仮宥愛は精霊の力で入り口に防護壁を張り、結翔は影の群れに向かって攻撃を仕掛けていく。

七海も一緒になり、三人で攻防していると、突然影達が一歩下がり、一人の人物が前に現れた。

その姿を見て、三人とも息を呑んだ。


そこに現れたのは、五年前の悲劇の元凶【紅蓮の魔女】だった。


「お前は………っ!!」

『ふふ。あら?あなた………前に来た時、火の精霊を宿した子ね。あれからどれだけ強くなったのか、みせてほしいわね』

「くっ!!こいつ……・…またっ!!」

「挑発に乗ってはいけませんよ、七海さん」

「でも、あいつの所為でお姉ちゃんが………っ!!」


すると、七海に目掛けて水の弾が飛んでいったかと思うと、顔面に当たった。

結翔が七見に向けて発したのだった。


「少しは冷静になって………それにしても、どういうつもりでまたきたの?」

『あらあら、あなたは随分と冷静なのね。それとも、怒りの感情さえ殺してしまったのかしら?”元奴隷”さん?』

「っ!!」


魔女の言葉に一瞬戸惑う結翔だが、大きく息を吐いて冷静さを保ち、魔女を睨む。


『そんな怖い顔しなくても、何も壊したりはしないわ。今日来たのは、別の用件を伝えに来ただけだから』

「別の、用件………?」

『そう、そこにいるあなた。用があるのはあなたによ。異界から来たと言うみたいだけど………どうかしら。少し話をさせてもらえるかしら?』

「私、ですか………?」


どうやら魔女は私と話がするために来たらしい。

でも、どうしたら良いのか。

無言で仮宥愛に視線を送ると、仮宥愛もまた無言で頷き、精霊の力を解除し、一歩下がった。


「私に話って、何ですか?」

『ふふ、物わかりが早くていい子ね。でも………此処では流石にゆっくり出来そうにないから、場所を変えましょう。私の城へ一緒に来ていただけるかしら?』

「魔女の、城に………ですか?」

「其れは………彼女一人で、でしょうか?」

『別にあなた達も来たかったら、一緒でもいいわ。でも………生きて帰れる保証はしないけれど』

「それでも私は行くわ!元々、私はあなたの城に行くつもりだったんだから………招いてくれるなら、こんな好機、逃して堪るものですか!」

「七海さんなら、そう言うと思いましたよ。ただし暴走しかねないためにも、私も同伴しますよ。結翔はどうします?」

「………・仮宥愛が行くなら。僕も、一緒に行く」

『ふふ、では決まりね』


そう言うと、魔女は指をパチンと鳴らすと、周りにいた亡霊達が煙のようにかき消えて。

代わりにそこには、禍々しい色を帯びぽっかりと空いた空間の裂け目が現れた。


『先に行って待ってるわ。どうぞ、ご自由においでなさい。闇と奈落の奥深く………深淵の地へ』


そして魔女はその空間の裂け目に姿を消した。


―――魔女の城。

そこは、闇の力の濃い冥界のエリア。

普通ならば、一歩でも足を踏み入れれば、たちまち瘴気に身体を蝕まれるという、魔の領域。

そこに、魔女自らが招こうとしている。


何の目的があって?

何に為に、私を?


理由はわからないけれど、魔女が自ら直々に会いに来てまで迎えてくれるのなら、こんな好機を逃してはもったいない。

けれど、生きて帰れる保証もない。

それでも、此処でこの好機を逃せば、次のチャンスはないと思い、私は決断した。

そして互いに視線を送り合い、一人ずつ、その裂け目の中へと入っていったのだった―――。


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